大格差 機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

タイラー・コーエン教授の新しい訳書。NTT出版、2014.9.18刊。
原題は「AVERAGE IS OVER」。
『創造的破壊』では解説の方が興味を持ててしまったように(⇒関連記事)、今回も読んだあとこの本は放置していたのですが、今読んでいる『Good Cities, Better Lives』(Routledge、2014)の第1章がとてもよく、そういえばこの内容は『大格差』の最後の章と呼応していると少し感動し、記事とします。
本年7月末に亡くなった偉大な都市計画家ピーター・ホール氏の最後の著作と思われる『Good Cities, Better Lives』を今読んでいます。
その第1章。5つのイギリスの課題を綴った第一部の最初の課題。いつも氏の著作からそのビジョンの大きさに驚きワクワクして都市や都市計画のおもしろさを学んだ私ですが、ロンドンで1度だけ氏の講義を聞いたことがあります。それは、「聞いた」というよりも「乗せられ引き込まれ一緒に都市を体験した」ような経験でした。
さきほど読み終えた第1章は、今やロンドンがメガ・シティー・リージョンとして突出し、「中世の都市国家フローレンスのようになっている」。それに対して残りの地域は、、、といった氏らしい壮大なストーリーで、本ブログでとりあげてきたさまざまな都市イノベーション関係の図書をある意味すべて踏まえつつ、国内の動向およびヨーロッパにおける位置づけをデータで示しながら、タイラー・コーエン氏の『大格差』の実態とリアルな動向をイギリスバージョンで語る内容でした。たった1章だけですが、この内容は、ピーター・ホール氏が最期に我々後輩たちに書き残したかったこれからの重大な課題のなかで最初に言いたかったことではないかと思えてきました。
『大格差』の第12章は同様に、「AVERAGE IS OVER」後のアメリカの諸都市がどのように変容していくかを大胆に予測したもので、ある意味、「クリエイティブ・クラス論」に対する「アンダー・クラス論」を展開しつつ両者が分離しながら都市や地域や国が大きく変容していく超将来を語ったものです。
『Good Cities, Better Lives』第1章の最後の凄味のある10行の「Conclusion」を氏がどのような思いで書いたのかは想像しかできませんが、『大格差』第12章と合わせて、21世紀の都市のこれからを考えるための大きな手がかりになることは間違いありません。

[関連記事]
・「創造的破壊」(都市イノベーション読本 第11話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20110830/1314706821