近世都市の成立

昨晩届いていた『図書』(岩波書店)12月号をペラペラめくっていると、ふと、「都市史研究から見た日本の近世」という対談が目に留まりました。なかなか興味深い内容だったため、そこに紹介されていた『岩波講座日本歴史』第10巻(2014.1.21刊)をさっそく買って、表題の「近世都市の成立」(伊藤穀著)を読んでみると、“かなりの都市イノベーション”の内容。ここでいう都市イノベーションは、都市そのものをイノベーションすることではなく、私たちの「近世都市の成立」認識を大きくイノベーションする新しい認識像です。
本ブログでみると、『信長の城』(⇒関連記事1)と『城下町』(⇒関連記事2)の間にある隙間を埋めつつ、城下町だけにこだわらず当時の鉱山町(上相川など)や温泉町(伊香保)、港町や在郷町(堺、長崎、安芸竹原)に共通にみられる近世的都市計画手法、主体、技術等を抽出しています。さらに「三都」といわれた京都、大坂、江戸の近世化の実態を描き出し、最後に、これら日本の都市の近世化とオランダ、フランス都市の近世化、さらにはマドラスボンベイカルカッタなどイギリス植民都市との共通点をグローバルに描き出す研究へと向かいつつある意気込みが書かれていてワクワクします。この見方は『アジアからみる日本都市史』(⇒関連記事3)で「13世紀から18世紀にかけての東アジアは、政権の相対的な安定と経済の進展にともない、各国が独自の伝統に根ざす国家をつくり」(p57)とする仮説とはかなり異なっているようにもみえることも、日本の建築史・都市史・都市計画史を考える場合に注目したいところです。
ところで、「50年、150年、500年、1500年」というのが昨晩まで考えていた次のテーマだったのですが、「郊外化」と「近代化」と「近世化」と「古代律令制」を結び付けようとする強引な設定がたたってボツになりかけていた矢先にこの論文に出会いました。研究は地道に、しかし大きなビジョンをもってやらないといけませんね。

[関連記事1]
・「信長の城」(都市イノベーション読本 第79話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130129/1359426558
[関連記事2]
・「城下町」(都市イノベーション読本 第89話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130409/1365473723
[関連記事3]
・「アジアからみる日本都市史」(都市イノベーション読本 第86話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130319/1363673208