『さらば、資本主義』

明日が発行日とされているこの本(佐伯啓思著、新潮新書641)。最後のほうで資本主義に「さらば」する思考は刺激的ですが、トマ・ピケティの評価のしかたにおいて共鳴できる部分があり(⇒関連記事1)、「都市イノベーション開墾」を考えるきっかけの1つとします。例の「r(資本収益率)>g(経済成長率)」という数式の、特にgそのものが世界的にみても低い(もともと低く、戦後の特定の時期を除いては低い)点に関してです(⇒関連記事2)。
現在進行中の大学院授業『地域創造論』では、テーマを「ローカルからの発想が日本を変える、世界を変える。」としていて、gそのものを高めるにはどうしたらよいか、という観点もないではないのですが、むしろ「r」を高める地域の取り組みを構築することや、「g」のとらえかたそのものをイノベーションしようという意気込みです!
これは『ポスト資本主義』(広井良典著、岩波新書1550、2015.6.19刊)のp185にある、(1)地域、国家、地球各レベルにおける「公−共−私」の総合化(のうち地域に焦点を当てる)、(2)ローカル・レベルからの出発、の2点に近い発想です。また、GDPにかわる指標としては、個人ベースの「幸福度」ではなく「公共のハピネス」(『経済成長神話の終わり』の著者アンドリュー・J・サターの言葉)の維持・増進に注目したいと思います。来月、“GNHの国”ブータンに行く予定です。何か「開墾」できたらまた報告します。

[関連記事1]
・『21世紀の資本』(都市イノベーション2020 第68話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150104/1420340297
[関連記事2]
・『「空間」から読み解く世界史』×『Unified Growth Theory』(都市イノベーション2020 第80話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150507/1430964042