THE CITY IN HISTORY (邦訳『歴史の都市明日の都市』)

ルイス・マンフォード著、1961。
大型で重たく箱入りの邦訳版ではずっと読めなかったこの本が、ペーパーバック版で紀伊国屋書店に並んでいるのが目に留まり、持ち歩いているうちについに最後のページに到達しました。
都市イノベーション「開墾」に関係しそうな論点を書いてみます。
この本は、(世界中の)都市というものの起こりと変遷と現代的課題を通史として描き出したという意味で古典的名作。なかでもメソポタミアからローマに至る古代史だけでおよそ4割を費やしているのは圧巻です。一般的な「世界史」とは異なり、都市という場所が中心なので、支配者がたびたび変わっても基本的には受け継がれる都市そのものの盛衰・進化が浮かび上がります。

とはいえ、やはりヨーロッパからアメリカに至る都市の歴史です。たとえば日本を含むアジアのことは、メソポタミアなどが出てくる古代を除くと、まったくというほど出てきません。
ではどこにそのような図書があるかというと、残念ながらまだそのような作品は出ていないのではないかと思います。いないとすると、そのヒストリー(ストーリー)をつくることがまさに都市イノベーション開墾。けっこうそれはたいへんです。そもそもそれはある意味、都市をめぐる世界の共通認識をどこかで打ち破るようなことなので、単にどことどこにどんな都市がありそれがこう計画されたり開発されてああなった、というぐらいではダメです。また、単なる世界史ではダメで、世界の都市史でもありません。都市を通してみた新しい世界史・文明史・地球史のようなものです。
最近、そのような視点をもつ成果が各地で多くなってきていると感じます。

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