『Planning Middle Eastern Cities(2004)』+『The Evolving Arab City(2008)』

ドバイ開墾(10) 」で紹介したYasser Elsheshtawy氏が実は標記図書(いずれもROUTLEDGE刊)の編者だったことを知り、これら成果はマンフォードが書いていないこれら地域の諸都市の「世界史・文明史・地球史」の一端なのだろう(になるのだろう)とワクワクしながら、積んだままになっていた都市のストーリーを読んでいます。ドバイを発端にしつつ、アブダビ、ドーハ、マナマ、クウェート、リヤド、サヌア、カイロ、バグダード、アンマン、ベイルートチュニス、アルジェ、ラバトが、著者によって少しずつ力点が異なるものの、都市の発生からはじまり近代化のプロセスが語られたあと、とりわけベルリンの壁崩壊以降のグローバル化への各都市の対応の様子が、相互に比較可能な形で語られます。
グローバル化という切り口1つをとっても、それまでに蓄積した市街地の特徴、植民地化あるいは保護領などの歴史と独立後の体制、オイルが出たかどうか、イスラム教と都市空間・都市政策との兼ね合いやライフスタイル、都市計画として特に「どこにどれだけ」新しい都市開発を行ったか、などの諸要因によってグローバル化のあらわれ方やその都市に与えるインパクトが多様であった(ある)ことが、今まで知らなかったかなりの精度でわかります。

編者のElsheshtawy氏は、「ドバイゼーション」だけにこだわっているわけではないものの、新たなグローバル化という現象が、「ドバイゼーション」とも名づけられる形でアラブの各都市にあらわれていて、その中からこれら地域の「住みたい都市」づくりへの道筋が出てくるのではないかという期待(あるいは仮説、希望)をもっているのではと思われます。
けれどもこれら2つの図書の基本的意図は、そもそもあまりにこの地域の都市の現状や動向が都市計画・建築・景観の目でとらえられてこなかったので、まずは客観的にそれらをとらえること、そして、それを情報発信しようという点にあり、これだけ多くの代表都市を一定レベルで記述できた背景には、この編著者の並々ならぬ思いがあるものと推察します。まだドバイに行ってきただけの自分がこうしてヨーロッパとアジアの間にある独自の世界の都市のことをこれだけの基本情報(および都市史・都市計画史・都市観・都市理論)として理解できることに、まずは感謝したいと思います。