広域戦略計画の廃止で「ケンブリッジ現象」の勢いはどうなるか?

今週届いたTown Planning Review誌をめくっていると、「ケンブリッジ現象(Cambridge Phenomenon)」という文字が目に留まりました(TPR87(1),2016,31-52)。その論説は、ケンブリッジ大学を中心にハイテク産業が地域経済を盛り立ててきた「ケンブリッジ現象」が、「ローカリズム」による広域戦略計画の廃止によりどうなってしまうかについて論じたものです。これまでさまざまな形で地域主体(とりわけビジネス主体)の連携により強靭な地域経済を創造してきた強みがあり、それは今後も強みになるとしつつも、「弱み」になりうる要素が出てきていると5つの心配をあげています。
1つめはこれまで成長が著しい南ケンブリッジにおける不協和音。2020年をめざすローカルプラン策定プロセスでぎくしゃくしているようです。2つめは、インフラ関係の政府資金の減少。3つめが広域調整・協力機能が弱体化しておりLocalism Actによる協力義務規定(the duty to cooperate)もあまり機能していない。4つめは、広域計画の廃止により基礎自治体より上の調整機能がきわめて弱くなり(補注1)特に住宅戸数ターゲットが無くなってそれにうまく対応できない。5つめは、ケンブリッジ大学そのものが独自の組織を強化しつつあり、また、北西ケンブリッジも独自路線に向かいそうであるなど、これまで強く保たれていた連携が弱まっている。

(補注1)「general power of competence」により基礎自治体やさらにその下のパリッシュの権限が強められた。

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)