『オリンピックのすべて』

リオ五輪がはじまりました。五輪開催そのものが開催都市のみならず国のありようにまで影響を及ぼすほどのオリンピック、正確にいうと近代オリンピックはなぜ、どのようにはじまったのか?
ウィキペディアでも「古代ギリシアオリンピアの祭典をもとにして、世界的なスポーツ大会を開催する事をフランスのクーベルタン男爵が19世紀末のソルボンヌ大における会議で提唱、決議された」となっていますが、本書『オリンピックのすべて』(副題「古代の理想から現代の諸問題まで」ジム・バリー+ヴァシル・ギルギノフ著、舛本直文訳、大修館書店、2008)では数々の切り口からオリンピックを再認識する機会を提供しています。
近代オリンピック誕生の面でおもしろかった点をざっとあげると、、、(少しぼかして書きます。)
第一。近代オリンピックの前史。あの古代オリンピックを復興させようとする契機はどのようなものだったかについて、1)連綿と続いた競技を誰が支えどのように受け渡されたか、2)古代オリンピアの発掘がいかになされ、いかに影響したか、3)近代オリンピックの前史ともいえる競技会が誰により、どこでどのように行われていたか。個人的にはこの3番目にたいへん興味が湧きます。古くは1604年に開催されており、1つ1つが個性的です。
第二。クーベルタンの理念はどのように実行につなげられたか。ここだけ少し書くと、当初クーベルタン英米の経済力・政治力に注目してイギリスのハーバート、アメリカのスローンを引き入れ、自分を含めた3人で手分けして、ハーバートはイギリスとイギリス国王担当、スローンはアメリカ大陸担当、クーベルタンはフランスとヨーロッパ大陸担当として働きかけをおこない、第1回の1894年ソルボンヌ会議に14か国から79人の代表と49のスポーツ団体が参加したとされます(この会議でIOC設立)。その結果1896年に第1回アテネ大会が開催され、14か国から244人の男子選手が参加。9競技43種目が行われています。

それから120年。リオ五輪には204の国・地域が参加。28競技306種目に10500人の男女選手が登場します。

それにしても、このような本を書く人とは、どのような動機・分野の人たちなのでしょう。
p388の日本語訳によると、ジム・バリー氏は英国リーズ大学の元哲学科長。専門はオリンピックの哲学的・倫理学的研究。ヴァシル・ギルギノフ氏は英国ブルネル大学の上級講師で、専門はオリンピック・ムーブメント研究と東ヨーロッパ社会のスポーツ研究なのだそうです。

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