初のレファレンダム不通過事例が出ました(近隣計画をめぐる新トピック(1))

近隣計画については、運用も含めて一通りの成果をウォッチしてきましたが、ここにきて、新しい話題が出てきました。2件続けて取り上げます。まずはその(1)。
本日届いたPlanning誌2016.11.4号によると、250ほどのレファレンダムが滞りなくなされて近隣計画が次々に誕生している中、運用上はじめて、レファレンダムを通過できなかった近隣計画事例が出ました。
場所はダービー県のダービー市に北接するAmber Valleyという自治体にあるSwanwickというパリッシュ。85%が「no」の投票だったということで、いったい何が起こったのでしょうか。

Swanwickは牧草地が広がるイングランドらしい田園地帯の村ですが、1970年代より開発が進みその面積が2倍になってしまったため、開発抑制的な内容の近隣計画を立案。しかしその内容がさまざまな上位計画等に適合せず、2016年4月25日に提出された審査報告書(Examination Report)では、多くの政策を削除するか大幅に書き換えるよう勧告がなされました。そればかりか、近隣計画の根幹をなす「aims and objectives」までもが削除すべしと勧告されてしまったのです。けれども審査報告書では、それら勧告に従って修正したものをレファレンダムにかけることも勧告していました。
近隣計画案が当該自治体に提出されたあと審査官に審査を依頼したり審査報告書に基づいて修正をほどこしたりレファレンダムの手はずを整えるのは当該自治体の仕事とされています。修正にあたっては、当然、近隣計画策定主体の意志を確認するなどの手続きがマニュアルには書かれているのですが、6月に当該自治体内で修正を行ったあとで、近隣計画を取り下げたいとの意思が地元から伝えられたため、それは後の祭り。取り下げは6月の当該自治体の修正の前にしなければにらなかったと。当然、「そんなズタズタにされた近隣計画なら採択されないほうがマシ」と、地元では「投票でYesにしないで」運動を展開。結局、2016年10月20日のレファレンダムでは上記の結果になったのでした。

特殊ケースといえば特殊なのですが、何とも後味の悪い結果です。不名誉な記録と言えなくもありません。地元では現在、「もう何もする気になれない」とのこと。それはそうでしょう。
少し間を置いて、このSwanwickの人たちが何を考えどう行動するか、、、しばらく見守りたいと思います。