ACVの話(その4) : 許可不要の用途変更をめぐる国会審議

ACV(Asset of Community Value)は、2011年ローカリズム法で創設された制度で、ローカルな価値をもつと地域住民らが考えるパブや歴史的資源等を登録すると(手続きは当該自治体が行う)、たとえば地域住民が愛用するパブがデベロッパーに買収されマンション開発されようとした際、一定期間をかせいで資金調達しパブを守ることができる可能性が高まる(はず)、といった趣旨のシクミです。既に登録数は全国で2000件ほどに達したようです。(⇒関連記事(その1)から(その3)へ)
その趣旨のとおりに地域資源を守るのは大変なのですが、より根本的なところで都市計画制度に問題がある、と、パブを「一夜のうちに」失い家具店になってしまったブライトンの住民ら(Dyke Tavernという愛するパブが転用されてしまった)から制度是正の請願があり、現在、国会で取り上げられて審議中です。
これはPlanning誌2017.3.10号p6-7に出ている話。

イギリスの都市計画では、用途変更に対して計画許可が必要なのですが、類似用途内の変更にはさすがに許可までは不要でしょう、ということで、用途クラスA4のパブをA1の小売店にしたり、A2の金融サービスにしたり、A4のカフェに転用する場合には許可が不要、としています。
2017年2月28日になされた上院(House of Lords)でのパブをめぐる真剣な審議をみてみると、この「許可不要」規定のために、イギリス国民の愛するパブが「1日10軒も減少して」おり、これはACV以前の、都市計画制度そのものの根本的問題である。パブからの転用は計画許可必要とすべきだ、との支持意見が複数述べられます。これに対して、反対意見や、「もっと調査をしてから判断すべき」といった慎重論などが長時間にわたり展開。最後に「そろそろ採決を」との声に促され、採決の結果、278対188で、上院で採択となりました。

この法案修正を含む「Neighbourhood Planning Bill」の審議はほぼ最終段階。5月頭くらいには女王の裁可が下されるものと思われます。

[関連記事]
・下記(その3)に入ると(その1)(その2)につながります
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140603/1401771016