CILの話(その3) : この制度は有効に機能しているか?

開発から一定額を徴収して(levy)それを地域に再投資することで地域価値を高めようとするCIL(Community Infrastructure Levy)がうまく機能していないのではないか?
との問題意識から、この2月に政府から報告書が公表されました。これもPlanning誌2017.3.10号(p11)に出ている話題です。(⇒関連記事)

2017年2月に公表された「CIL REVIEW TEAM」による国の報告書(⇒資料1)では、「CILは有効に機能していない」として、制度そのものを改革することを勧告しています。2008年に創設されたこの制度の普及が鈍く、ある自治体ではやっているのに隣の自治体ではやっていないなどの弊害を指摘しつつも、開発に一律の負担を課すCILの方法自体は他の方法(特にセクション106と呼ばれる交渉を通じてケースバイケースで負担を課す方法)に比べてフェアーで透明性が高く評価できるとして、以下の3点を勧告しています。1)大規模敷地はセクション106で、それでカバーできない中小の開発はCILで対応する、2)CILの「L(levy)」は「T(tarrif)」と変更して徴収額はぐっと減額し薄く広くとれるようにする、3)大都市部では特定目的に限った戦略的な徴収方法(Mayoral CIL=市長CIL)がとれるようにする。

Planning誌2017.3.10号の記事では、ロンドンでは、Crossrail2(都心を地下で横切る鉄道)に目的を限定してロンドンが徴収しているMayoral CILは予想以上に効果が上がっていると指摘(⇒これも2月に公表されたもの。資料2)。一律に、薄く広く徴収する「わかりやすい」制度であることが功を奏していると解説します。おそらくこれは政府報告書の勧告3)にイメージされているものと思われます。

今後の議論の行方が注目されます。

[CIL関連記事]
・その1(制度紹介と、特に近隣計画との関係)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20131007/1381153630 (2013.10.7記事)
・その2(制度運用上の課題と成果)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141028/1414490131 (2014.10.28記事)

[資料]
1.政府報告書(政府ページにリンク。一番上が報告書)
https://www.gov.uk/government/publications/community-infrastructure-levy-review-report-to-government
2.ロンドン報告書(直接pdfに)
https://www.london.gov.uk/sites/default/files/mcil_review_feb17.pdf