主たる居住を目的としない住宅開発の禁止をめぐる裁判(近隣計画をめぐる新トピック(3))

「AWARDS2017」を特集したPlanning誌2017.7.3号をペラペラめくっていると、「近隣計画賞」という賞があり、それがセントアイヴズに贈られているのが目に留まりました。まだ行っていない憧れの地、セントアイヴズ。イングランドの西に張り出したしっぽのような半島の最西端付近にあるリゾート地、芸術家の集まる町。ウィキペディアでもその紹介文の最後に、「多くの観光客を集め、近年では過熱気味である」としています。

今回の受賞理由は、表題のとおり、セントアイヴズ近隣計画の中に、主たる居住を目的としない住宅開発を禁止する規定があったためデベロッパーに訴えられて裁判沙汰となったものの、この近隣計画自体はリーゾナブルにつくられており近隣計画自体のもつ可能性が(裁判官からも)高く評価されたことによります。Planningのこの号のp25にはその法的意義が詳しく解説されています。
それらも参考にして少し説明すると、第一に、ウィキペディアでも説明されているように「多くの観光客を集め、近年では過熱気味である」結果として多数の別荘開発が行われて地価が上昇。そのような別荘には年間を通してほとんど人は住んでいないのに、地価ばかりが吊り上げられて、本当にここで生活しようとする人が困った状態になっている。第二に、一般論として「主たる居住を目的としない住宅開発を禁止」することはきわめて難しく、本ケースにおいてもデベロッパー側の言い分によるとそれは、オーナーの人権を阻害するとされていました。第三に、実際の制限の実行手段としては開発許可手続きの際、開発条件としてそのような利用でないこと、そのような利用にならないことを付す方法によりポリシーを実現することとなり、それを不服として事業者が異議申立てすることになるわけですが、既にそうした申立ても却下される実績ができ、近隣計画の政策が支持されたという実績ができてきています。

こうなってくると少し心配なのは、こうした受け身の政策だけでセントアイブズはこれから大丈夫なのか?という点です。近隣計画の中では抑制的な政策ばかりでなく開発的な要素もみられること、近隣計画とは別の「Action Plan」という形で計画策定を進めようとした形跡もみられることなどとも合わせ、持続的まちづくりの行く末を見守りたいと思います。