ロンドンイノベーション(4):クロスレール開業(2018.12予定)を控えた都心再生

ロンドンイノベーション(1)でとりあげた「London Overground」に続いて、「Crossrail」が2018年末に開業を予定しています。ロンドン西方のヒースロー空港やレディングから発してロンドン都心主要部を通過し、東方のストラットフォード方面などへ抜ける主要幹線鉄道で、「エリザベスライン」という名称も既につけられています。
そもそもこの鉄道開業によるインパクトは大きいはずですが、駅が設けられる都心部のパディントン、ボンドストリート、トッテナムコートロードなどでは開業に伴う直接のインパクトをどう受け止めるかが注目されます。今回はそれらのうち、産官学民組織「The West End Partnership」により2015年に発表された『The West End:Delivery Plan 2015-2030』(⇒資料へ)から注目される事業とりあげます。「People」「Place」「Prosperity」の3章構成のどれもが重要ですが、ここでは具体的な33のプロジェクトが、それらの実施主体、必要コスト、予定時期とともに示されている「Place」をとりあげます。

7番の「Tottenham Court Road two-way」と1番の「Oxford Street West」は冒頭の「Focus」としてパース入りで説明されているので、いわば目玉事業。とりわけ最初の7番の事業は、これまで一方通行だった主要道路を双方向交通としたうえ、月曜から土曜の8時から19時まではバスと自転車だけ通行可とする超歩行者優先路線化をめざしています。予算は5100万ポンド(145円換算で約74億円、Crossrail開業に合わせる計画)。
残りの31プロジェクトをおおざっぱに分類すると、「公共空間(主に歩行者空間)改善」20、「道路空間と周囲を合わせた場所改善」5、「駅(前)空間の施設整備」4、「スクエアの改善とアクセス向上」1、「一方通行の双方通行化」1です。やはり、Crossrail開業により(ただでさえ混雑している)駅近辺の歩行者系キャパシティが不足するので、これを機会に、長年車優先で山積している問題を、公共空間の再配分を系統的・面的・徹底的(?)に行うことで、ロンドン都心部の再生の起爆剤にしようと意図しているものと思われます。ただし、全部合わせても約320億円(不明な2件を除く)の見積もりなので、あまり大きめにみるのも禁物かもしれません。とはいえ、170の民間事業が既に許可を得ているとの記述もあり、Crossrailの効果と公共空間改善効果を、これら民間事業による効果と合わせて(or効果に波及させて)どれだけイノベーションにつなげられるかが勝負所かもしれません。

[資料]
『The West End:Delivery Plan 2015-2030』(下記URLにあります)
[リンク切れにより再設定(2023.8.14)]
https://crossriverpartnership.org/wp-content/uploads/2019/03/wep_delivery_plan_2015_2030.pdf


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・ロンドンイノベーション
(1) London Overground
(2) オリンピックと下町再生
(3) 外資からみた都市イノベーション

【in evolution】世界の都市と都市計画
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http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20170309/1489041168