居住者が多様なため近隣フォーラムが設立できない場合の代替策 (近隣計画をめぐる新トピック(5))

2017.8.22の記事『Localism and neighbourhood planning』の論点の2番目であげた、居住者が多様で複雑なため近隣計画の策定主体「近隣フォーラム」を立ち上げられないケースについて、ロンドンハックニー区のケースがこの本で紹介されているので書き留めておきます。実は横浜にもそのようなケースがあり(最初は主体が認定されていたがいろいろあって不在になっている)、複雑な大都市部などでは同様な悩みがありそうです。

ハックニー区はロンドン下町のさまざまな人が暮らす地域です。近隣計画にも取り組もうとする動きが出てきたのですが、2013年7月には「North Hackney」として申請したエリアが広すぎるという理由で却下され、かわって「Stamford Hill」という狭められたエリアが近隣計画区域とされました。しかしその区域に対して2つの団体からフォーラム申請が時間差を伴ってあり、それぞれが我こそはこのエリアのフォーラムになると主張。考え方の隔たりが大きいため、区としては両方とも却下せざるを得ませんでした。最後の却下が2014年11月24日と今から3年ほど前です。
区としてはそのままにすることもできず、区が主導する「Area Action Plan」という法定計画を策定しようと決意します。2015年春のこと。ボトムアップで計画をつくろうとするとどうしても対立してしまうため、また、かといって全体をまとめてくれるありがたい主体がすぐにできそうにないので、区が呼びかける形で各ステークホルダーの参画を呼びかけ、2016年12月には「Towards a Stamford Hill Plan」というタタキ台の公表までこぎつけました。1年前のことです。このタタキ台に意見募集をしたところ2000件を超える反応があり、現在、それらを踏まえた素案を作成中。2018年中にはその素案が公表される予定です。
最終的に採択されると、「Area Action Plan」は区の「Local Plan」の一部となります。
近隣計画とは異なり行政が主導して策定するエリアプラン。
実は、ハックニー区では「Area Action Plan」を「London Overground」の駅周辺等4地区で策定済み(2012年2件、2013年2件)。そのような経験はあります。しかしどちらかというと一般的な住宅地区と思われる「Stamford Hill」で「Area Action Plan」を使って計画を立てるというのは、難しい作業かもしれません。けれども、ハックニー区では「Stamford Hill」に続いて「Future Shoreditch」という名称の「Area Action Plan」の策定を最近Shoreditchエリアではじめました。
一方、近隣計画の策定は芳しくありません。「Chatsworth Road」地区で唯一フォーラム設立までこぎつけていますが、他は、小エリアをとりあえず区域設定したもの、フォーラムが却下されたものなどです。
このようにみていくと、「居住者が多様なため」という面と、むしろアクションが必要な地域であるという面において、ハックニーでは近隣計画の制度構成には馴染まない(あまりメリットがない)と考えるべきかもしれません。