『THE VILLAGE NEWS』 (ロンドンイノベーション(6))

TIM FORT著、SIMON & SHUSTER刊、2017。
都市に暮らすことで失ってしまう田園の豊かな環境。都市が拡大することで失われる田園の風景、、、。
しかし待てよ。そのような認識や嘆きは本当なのか?
と疑い、自転車に乗ってさまざまなビレッジを回り、しぶとく生き続けるその姿を描き出した快作。副題の「The truth behind England’s rural truth」が本書の内容に迫ります。22章で構成される本書のおもしろさをあげると、、

第一。田園居住がメインで都市内の住宅はセカンドハウスにしている人も大勢いるようで、そのようなこだわりの強さがビレッジを支えていることを強く感じます。「ビレッジ」を「村」と訳してしまうと失われてしまうその精神というか、失われまいとするレジリアンスな生き方に興味が向かいます。
第二。確かにビレッジはかつては村で、農民が耕作する田園地帯でした。ある章の分析によれば村の人口が増える際、農業に従事する人口はさほど変わらない中、その他人口がぐっと増えるため、ビレッジは村というより「田園生活を大切にする都市住民が暮らす田園拠点」のような感じになってくる。
第三。その過程で、他の中心の一部だった村が「parish」となり、村(ビレッジ)」の経営を行うようになる。必ずしも民主的とはいえない運営や、やりがいのある職務ともみなされない傾向もあるようですが、この筆者の住むパリッシュではそのような旧勢力に選挙で勝って、近隣計画の意義に注目。(筆者はあまりちゃんとは関わらなかったようですが)昨年、公式のディベロップメントプランになっています。
第三。そのビレッジがもつ「公共財」ともいえる基本要素。パブ、売店クリケット場、教会など。「もつべき」とまでは言えないけれども、これらがあることでコミュニティが持続しやすくなり、一定の変化の範囲であれば新しく更新されながらも受け継がれていく。
第四。こうして、都市が拡大し息の詰まる環境が拡大するほど田園居住へのニーズも高まり、購買層もかなり高所得となっている。油断していると、大手ビルダーにより画一的な「郊外」「田園居住」がつくられてしまう。ビレッジの良さはその空間的多様性にある。ビレッジが引き継がれていくためには新たな住宅開発も必要。その折り合いをつけることが大切。と筆者は、各地のビレッジを訪ねて将来への意気込みをも語っています。

【in evolution】世界の都市と都市計画
本記事をリストに追加しました。
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20170309/1489041168