イギリスで電話ボックスの設置申請をめぐる不服申立て審査が激増しているヘンな話

今届いたPlanning2018.5.4号をペラペラめくっていると、「phone kiosk」という大きな文字と2017/18年度に激増している様子を示す棒グラフが目に留まりました。
イギリスでは計画許可判断に不服申立てをすることができ、最終的には国の機関である計画審査庁が判断を下します。不服申立てされた電話ボックス申請は2015/16年度に34件だったものが、2016/17年度に149件、2017/18年度には激増して1221件になったと。なにコレ???

アンティーク好きなイギリス人がスマホを捨てて公衆電話に回帰したと思いきや、そういうことではなく、実は、電話ボックス壁面に大きな宣伝広告を出す手法が大いに流行しているのが理由のようです。サンプル調査された都市の1つニューカッスルでは、「2015年度には1件だった申請が2017年1月以後158件に達した」(p9)と。「うち86件は却下された(refused)」(同)。
微妙ですね。72件は却下されなかったわけなので、どのような電話ボックスまで許されたかの境界線を見たい気もします。けれども論点はそこではなく、「こんなことでこんなに不服申立てされると本来業務に支障をきたす」という計画審査庁の悲鳴のようなものです。電話ボックス関係だけで全処理件数の7%にも達しているのだと。国の審査庁もたいへんでしょうけれど、地元自治体はその当事者。さきのニューカッスル市では1人の職員が電話ボックスだけにほぼかかりきりの状態。

最後に。もう少しテクニカルにこの課題を解き明かします。
第一。「許可が要らない」範囲を示した「General Permitted Development Order(GPDO)」というルールにおいて電話ボックスは「附則2」の第6章「Communications」に書かれています。住宅の軽微な増築のように、わざわざ時間をかけてまで「許可」「不許可」の審査までしなくてよいでしょう、というのがこのルール全体の主旨です。
第二。けれどもGPDPを実際に読んでみると、その書き方は、「○○○は許される」と一般論を書いたあとで、「許されない」ものがたくさん書いてあります。さらに、「条件」が付加されています。つまり、「許される」範囲を簡単に書くことは意外に難しく、「許されない」ものや、「許される」ための条件をたくさん緻密に書くことによって、はじめて「こういうのだったらよい」ということがわかる書き方です。
第三。電話ボックスが含まれる「Communications」の中の条件として、「prior approval(事前承認)」という項目があり、デザインや見栄えなどの観点から承認しないことができると規定されているため、承認されなかった場合、事業者は不服を申立てることができる、となっているようです。

この問題を解決するため、そもそも時代遅れの電話ボックスの規定そのものを刷新すべきだとか、電話ボックスの広告に対して地方自治体がもっとコントロールできるようにすべき、といった声が次第に強くなっています。
オフィスから住宅への転用問題も、パブ消滅への危機打開策も、この問題も、「どのような開発は認められるか」という国民の利害・関心が強くからむ都市計画上の課題。三者で議論している次元は全く異なるのですが、その議論の仕方や対処の仕方などに注目しています。