ガーメントセンター運営委員会報告&勧告(2017)

昨晩、『UP(2018.6号)』をペラペラめくっていると、「都市再開発のフロンティアと人種・エスニシティの境界線」と題された森千香子先生(社会学)の連載が。連載全体のタイトルは「移民の街・ニューヨークの再編と居住をめぐる闘い」で、今回は「2」となっているので、「1」もあるはずと探したところ2018.4号に出ていました。ただし、都市計画的観点からは「2」の内容がきわめて興味深く感じました。というのも、ゾーニングの緩和と居住者の追い出しの関係を議論しているからです。まだ「2」なので、この連載のこれからの展開を楽しみにするとして、、、
すぐに思い出したのが「What to Make of New York’s New Economy? The Politics of the Creative Field」という、『Urban Studies』の論文(2009年、1063-1093)。本ブログでも当時、「ニューヨークの創造産業の変遷やそれを担う主体の動きをとらえた論文は圧巻」と書いています(⇒関連記事)。マンハッタンからブルックリン等に押し出されそうになっている芸術関係者らの組織的葛藤を描いています。そこでもゾーニングの見直しなどの都市計画が大いにからんでおり、都市計画が重要なキーワードになっていることがわかります。

さて、本題はここから。そのマンハッタンから押し出されそうになっている服飾産業を保護しているガーメントセンター特別目的地区の話。ニューヨーク市の特別目的地区については先日、3年の「都市計画とまちづくり」でも扱い、最も今日的な話題としてガーメントセンターの都市計画を補足的に話したばかりです。
標題の報告書が昨年出ています。マンハッタンのど真ん中で起こっている、世界的なクリエイティブ産業を保護・増進するために、特別目的地区として設定している特別なゾーニングを基本的には継承しつつ(他の産業政策やまちづくり施策等ともからめながら)進化させようとする勧告内容が注目されます。
http://manhattanbp.nyc.gov/downloads/pdf/GarmentCenterReport.pdf
この勧告の内容は、ガーメントセンターという特別な場所の都市計画としても注目されますが、ゾーニングの戦略的な見直し方法そのものにチャレンジしようとしている点や、マンハッタンの区長のリーダーシップも、大都市都心部における都市計画とは何かを考えるうえでもとても注目されます。

[関連記事]
・Trajectories of the New Economy(Urban Studies特集)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20110823/1314072944