新近郊

 「新型コロナと都市計画」という原稿が先週仕上がりました。近代都市計画確立のきっかけとなった伝染病や公衆衛生から話をはじめ、新型コロナ前の都市計画潮流・都市計画課題に対して新型コロナが見直しを迫るものなのか、逆に追い風となりうるのか。見直しを迫っているのはどの部分で、追い風になりうるのはどこか、などについて考えたものです。「新型コロナ」の影響そのものが今後どうなるかについては誰も予測できないなかで、そうはいっても日々対処の必要はあり、また、中長期的な計画策定の場面では避けて通れない事項であるため、「一旦様子見」も含めて何らかの判断が必要になっています。

昨日の神奈川県O町での議論もまたそのような話題の1つです。O町は東京駅からだと1時間ほどの、都市近郊の小さな町ですが近年人口が減少し高齢化も進んで空き家がかなり増加しています。新型コロナはある意味、若い世帯がこの町に移り住む「追い風」にもなりうるということで、今後10年間の計画の中で、どのようにしたらこうしたエネルギーを町の活性化のために受け入れられるかが重要なテーマとして浮上しています。単に人が増えればよいのではなく、この町の文化や個性を維持・増進するための施策です。

 

本日のテーマは「新近郊」。新型コロナでいきなり地方に移住するのではなく、大都市の利便性や教育機会などを享受しながらもライフスタイルや働き方を少し変えて、密を避け、「新近郊」とでもいえるエリアを求める人が増えているのではないか。移り住まないまでも、「新近郊」の自然や環境が見直されて、首都圏内部での土地利用、移動、生活、働き方が変わっていきそうにみえる、、、

「新型コロナと都市計画」には間に合わなかったので(変動しそうな直近データは使わなかったので)、ここでは直近のデータを少し並べてみます。

2020年8月の住民基本台帳ベースの数字です。東京都からは4514人の転出超過(転出が32038人で前年同月より16.7%増加、転入が27524人で11.5%減少)がみられましたが、1都3県でまとめると転出超過は459人にとどまり(転出が28911人で前年同月より5.8%増加、転入が28452人で14%の減少)、1都3県レベルでは出入りがほぼトントン。ということから、「新近郊」志向が少し裏付けられます。「第二波」が流行し始めた2020年7月は、1都3県からの転出超過が7年ぶりに起こった月とされるので、まだ1都3県の人々は域内にとどまりつつ「新近郊」化を模索している、といった感じでしょうか。いずれにしても今後どうなるかは「予測」できません。

けれども、将来計画を立てる立場からは、地域課題の解決にこうした動きをどう組み込むか、組み込みうるか、何がそれを促進することにつながるか、誰がどうやってそうしたことを担えるかが現実的なテーマです。

 

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