『さよならオフィス』

7月16日発行の『アフターコロナ   見えてきた7つのメガトレンド』で「1つだけ宿題として残った」空間の変容について考察したとされる書。

2020.10.8発行。日経プレミアシリーズ443。著者は島津翔。

都心のオフィスを本当に必要な機能のみに絞り5分の1の賃料のオフィスに移転したベンチャー、地方に移転したベンチャー、大企業のオフィス再編戦略、さまざまな貸しスペースベンチャーなどの話がぎっしり詰まったアフターコロナ本。「最後に必要なオフィス機能とは?」「わざわざオフィスに行く意味とは何なのか?」との問いに、3つのキーワードにたどり着きます。それが何かは読んでのお楽しみに。

 

さて、「新近郊」という新しいエリアの出現について気になっているところですが、一方で「オフィス」という建築・空間形態自体がどうなっていくのかも考えたいところ。都市計画的にはさらに、都心部そのものがどうなるか。

本書はオフィス空間そのものの3つの意味に迫っているので、その勢いでそれが都心空間に表出した姿やそれに伴う効果・影響を考えるとよいのだと思います。

 

最近のプロジェクトでは、屋外が森のようになっていたり公園がくっついていたり、用途が複合したり、天井がかなり高い1階部が飲食・ショッピングモールのようになっていたり、テラス階があったり、、と、「オフィスビル然」とした自らの姿を大きく変容させています。

このことと「オフィス」そのものは連動していて、あるものは同時に、あるものは外部の変容がオフィスの変容を促し、オフィスが先に変わった場合は外部の変化を促す力にもなる。

 

想像できるのは、オフィス街から「わざわざ行きたくなる」「楽しい」街。その楽しさゆえに自由な発想で新たな価値が生まれ、自分も変わり、またそれが次につながってゆく知識・文化生産の街。

 

「さよならオフィス」というメッセージには、「そろそろ20世紀的な古いオフィスにはさよならしましょう」という意味深く、イノベイティブなビジョンが宿っているのだと思います!



 

 本記事を「ポスト・コロナ社会の新ビジョン」に追加しました。

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/2020/05/05/121753