『From Mobility to Accessibility』

世の中のキーワードだと思っていた「モビリティ」が目的そのものではない、都市計画の目的は「アクセシビリティ」の向上なのだと説く(説いていそうだとタイトルを見て)本書に惹き付けられさっそく読むことに。

 

たとえて言うなら、1つ前の記事に出てくる新築複合シェアビルは、都心の近隣商店街に建つことによって「職」へのトータルなアクセシビリティを高めたが(ただし道路はスイスイとは走れないので車で行こうとすると時間はかかる)、もしこのモビリティ問題を解決しようと道路を整備して郊外を開発し同じようなビルを建ててもアクセシビリティでは劣るかもしれない(車ならスイスイ行けるかもしれないが車でないとかなり行きにくくなる)。つまり、「モビリティ」そのものは手段の1つにすぎず、目的である(行きたい場所への到達のしやすさという)「アクセシビリティ」こそを評価しなければならない、というのが本書での主張です。しかし、「平均到達時間」は計測しやすいのに比して「アクセシビリティ」は計算もやや難しい(数式は割と単純だがそれに耐えるデータがすぐには揃わない)。だからどうしてもマニュアルなどはモビリティ評価でできていて、これから変えていかなければならない、と。

 

では、「アクセシビリティ」はどのような手段により成り立つかというと、Mobility(可動性),Proximity(近接性),Connectivity(接続性)の3つ。これらのうちMobilityとProximityは相反する性質がある。さきほどの複合シェアオフィスは中心市街地の近隣商店街に建てた(Proximityは高い)ので道路は混雑しがち(Mobilityは低い)、といったように。また、Connectivityはオンライン上の近さも含む。コロナ禍で得られた新しいConnectivity獲得手段の普及を考えると、Accessibilityを高めるさまざまなバリエーションを私たちは手に入れた、入れつつある、さらに新たな工夫を加えながら追及すべきといえそうです。

「MaaS」も使いよう。たとえば、相反する性質をもつMobilityとProximityをどうやったら両立できるか。1つ前の記事や、そこに出てくる『MaaSが都市を変える』をそのような目でみてみると、都市のAccessibilityを高めるさまざまなビジョンが見えてくる気がします。

 

副題は「Transforming Urban Transportation and Land-Use Planning」。Jonathan Levineら著、Cornell University Press 2019.