『スケール(上)(下)   生命、都市、経済をめぐる普遍的法則』(AIは世界をどう変えるか(その4))

ジョフリー・ウェスト著、山形浩生/森本正史訳、早川書房2020.10.20刊。

形のうえで「AIは、、」の(その4)としましたが、この本は、AIには今のところできない人間の「知性」の到達点を理論物理学者として統合的にとりまとめた興味あふれる書です。AIやビッグデータに頼るのではなく、人間の知力や洞察や努力によってこそ明らかにできること(特に理論的仮説)があるのだと。

書きはじめると長くなりそうなので、読みながら「ここぞ・これは」と感じた31箇所の分布だけ報告します。全10章に「あとがき」がつき11パート構成。

最多が第8章「結論と予測:流動性とライフ・ペースから社会接続性、多様性、代謝、成長へ」の8箇所。さらにこの8カ所は、12節あるこの章の最後の4節に集中しました。

2番目が「あとがき」5箇所。老境に入った著者が学際的で自由な研究環境に感謝しつつ次世代にバトンタッチしようとする気迫が伝わってきます。

3番目が第4章と第6章の各4箇所。4章は生命の成長・老化・死の理論的検討。6章がこれを都市にも応用できる・すべきとした「都市科学への序曲」。ここまでで計21カ所となり、あと10カ所は3,3,2,2と分散しました。

 

都市計画、都市科学が21世紀に理論的に追及すべき指標やアイデアに溢れています。溢れていますが理論的にはほぼ1つのこと「Scale(べき乗数)」を軸に議論している点が、理論物理学的です。べき乗に注目した図書はこれまでにもいろいろありましたが、より普遍的な視点をもって「なぜそのようになるか」を考察し、とりわけ都市科学の可能性について議論を展開している点で、実践的な書としても読めるところにこの書の魅力はあると思います。最後に、原文の副題が最も正確に本書の内容を伝えると思います。「The Universal Laws of Growth, Innovation, Sustainability, and the Pace of Life in Organisms, Cities, Economics, and Companies」

 

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