富士山爆発による溶岩流到達可能性マップの改定

本日も研究室からは富士山が美しく見え、ふと、「ここに降った雨や雪解け水はどの海に注ぐのか?」との昨日の問いを思い出したところ、それに続いて、「そういえば昨年、富士山噴火による溶岩流等の流出に関する見直しがあった」ことを思い出しました。まさに、「ここから噴出した溶岩流等はどこまで流れてくるのか? 海まで注ぐのか?」です。

 

三島市を中心に東駿河湾地域の都市計画にかかわってきたこともあり、昨年(2021年)3月26日に発表された「富士山ハザードマップの改定」(⇒資料)はかなり重要な出来事です。ここでは、2004年の旧マップがどのように改定されたかを、溶岩流に特に注目しながら重要と思われる順にいくつかに整理してみます。

第一。旧マップでは「過去の噴火」を3200年前からとしていたものを、5600年前からと範囲を広げました。また、最新の研究成果にもとづき、噴火の条件を変えたところ流出する溶岩流の想定は7億㎥から13億㎥へとほぼ倍増しました。(←比較のため、東日本大震災の復興での土地のかさ上げ量は約0.75億㎥)

第二。そうすると、流出範囲が広がることになるので、東駿河湾側だけ注目して地図から読み取り表現すると、以下のようになります。ここでは、「溶岩流可能性マップ」(いろいろな想定の最大の可能性を示したものなので、この図の範囲が同時に予想されるわけではない)を用います。1)旧マップでは、北から流れてきた溶岩流が三島市の市境付近までとなっていたものが、さらにグツと流れ込み三島駅あたりまで飲み込みながら、主力は標高の低い西側の黄瀬川(きせがわ)に沿って東海道本線を越え国道一号線の一部も飲み込んだあたりで止まっている。この間、むしろ沼津市側で飲み込まれる面積が大きい。

第三。今の描写を、今度は凡例に沿って「到達時間」で表現すると、むしろ「黄瀬川(きせがわ)に沿って東海道本線を越え国道一号線の一部も飲み込」む方が先で、「溶岩流が7日間で到達する可能性」がある。それ以外は「溶岩流が最終的に到達する可能性」があるとなっているので、黄瀬川がいっぱいになったあとさらにそこに収まりきらない溶岩流がジワジワと市街地に浸食しはじめ、最終的に上記の範囲まできて止まる。(←溶岩の動態には想像も含む)

第四。そのように最大限到達したあとの様子をあえて表現すると、三島駅は西側スレスレまで溶岩に埋まってしまったが大半の中心市街地の主力部分は難を逃れて都市機能は維持できている。けれども、(高架の新幹線は難を逃れるかもしれないが?)平面の東海道本線は溶岩でいっぱいとなり、国道1号線も一部溶岩に埋まってしまうので急遽迂回路をつくらないといけないかもしれない。沼津市の中心部も難をのがれているため、東西軸方向は南側に迂回すれば都市機能は維持できそう。けれども、東駿河湾側ではなく富士市側に流れ出た溶岩流は海まで達しているので(←もし両側同時に溶岩流が流れてくるとした場合だが)、結局、静岡東部の東西交通はアウトとなり、当面の間、東京方面は三島・沼津まで、名古屋方面は静岡市あたりまでという分断が生じるかもしれない。

 

以上が「5600年前からと範囲を広げ」た今回の改訂内容ですが、実は、三島市は溶岩の上にできた都市。さきほど「難を逃れた」とした三島市中心部は約1万年前の富士山噴火により流れ出た溶岩でできていて、その際には溶岩は海まで至ったとするものもあります。「5600年前から」というのがミソで、富士山は約17000年前から8000年前までは断続的に大量の溶岩を流出させていた(←この時期区分も今回改訂で書き換えられた)。しかしその後5600年前までは噴出は小規模な時期だった(←この時期区分も今回改訂で書き換えられた)。そのあと「5600年前から」というのが今回の見直しで参照された範囲です。

冒頭の「富士山が美しく見え」る理由も、もともと噴火を繰り返して徐々に土地が盛り上がり富士山ができた結果と考えると、大地は生きていることをヒシヒシと感じます。

なお、横浜や東京で気になる降灰については2021年改訂では見直されていません。

 

(資料) 「富士山ハザードマップの改定について」(概要版)

https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/documents/20210326_fujisan_011siryou1.pdf

 

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