100万人、10万人、1万人、1000人、100人、10人未満

今朝の日経新聞の1面に大きく、国土交通省の支援策が「鉄道・バス広域連携を支援 地方路線、複数年で補助」のタイトルで紹介されています。コロナ禍でガクッと乗車人員が減り、その背景にある人口減少は次第に加速しつつあり、根本的な地域課題解決を迫られていることへの1つの方向づけを意図したものと考えられます。

鉄道経営の状態を示す指標に用いられている「輸送密度」について、1500人/日・kmが営業収支が均衡する目安となるとされているようですが、7月の国土交通省有識者会議の提言で「1000人未満などの条件で、自治体や事業者による協議会を設置する」とされたのを受けての施策の一環と思われます。一般には立地適正化計画や地域公共交通計画の策定・運用等を通して各地域で広域連携の取り組みが行われている中で、今回は「輸送密度1000人未満」のような条件の厳しい地方での取り組みを促す施策になりそうです。

ここでは「輸送密度」を超主観的にとらえ表現することで地域課題のイメージをとらえてみることにします。(以下、タビリスによるJR(東海を除く5社)425区間データ(2020年度)から、「よくわかる」典型事例を念頭に表現してみる)

 

100万人。山手線70万人(コロナ前は常時100万人超)。いつも混んでいます。かつ頻度もとても高い。

10万人。東海道線大船~小田原14万人(コロナ前は20万人超)。10~15両編成。

1万人。熱海~伊東間が9千人(コロナ前は2万人弱)。頻度も低くなり、特定の期間等を除くと乗客はまばら。

1000人。内房線館山~安房鴨川、外房線勝浦~安房鴨川がちょうどこれくらい(コロナ前は1500人ほど)。頻度は1時間に1本くらいとなり、のどかな自然を乗客もあまりいない車両で旅する感じ。時間帯によっては地元高校生が乗っている。

100人。飯山線戸狩野沢温泉~津南77人(2019年は126人)。地元客はほとんどおらず、旅行者もわざわざ通らないがたまに訪れる人もいる。逆にいうと、慎重に計画しないと間が何時間も空いてしまう。車両編成も1両から2両くらいか。(先日とりあげた留萌線深川~留萌90人)

10人未満。災害等で不通区間になってしまったものがほとんど。

 

同じ朝刊の「経済教室」欄には1面記事に合わせるように「地方鉄道の未来(上) 地域の主体的な関与 不可欠」との見出しの議論とともに「輸送人キロ当たり営業費用」図が掲載されています(JR西日本の「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」2022.4.11)。これによると「輸送密度」が1200人から400人くらいまでの区間ではそれほど大きな差がないのに対して、400人から200人になると2倍弱の費用が、200人から先は“指数関数的な”コスト増となる様子がわかります。さらに1つだけ重要な指摘をあげると、1987~2019年の輸送密度は平均で73%減少しているのに対して、当該沿線の人口は17%減だったことです。このギャップが大きいと、地元自治体は鉄道存続等のための出費をためらうと考えられるからです。そこがこのスキームのポイントと思われ、「立地適正化計画や地域公共交通計画の策定・運用」のうちの「地域公共交通計画」を審査して支援するとの建付けとなるようです。

さて、いかほどの効果が期待できるか。

輸送密度がまだそれなりにある静岡県M市においても「地域公共交通計画」の策定が進んでいます。都市計画か交通計画かというより、両者を統合した「都市地域経営(マネジメント)」「地域創造」が不可欠な時代に入ったのだと改めて感じます。