『図説 都市計画』: 都市計画の教科書は進化する

2022.11.1発行の標記図書(澤木昌典・嘉名光市編著、学芸出版社)を送っていただき、ありがとうございました。工夫が各所にみられ、また、共感できる部分もかなりあったので、お礼も兼ねて、この教科書の魅力を書いてみます。

 

第一。「都市計画」とは何かについて、定義がはっきりと書かれているわけではありませんが、序章において、最後まで「都市計画」が主役になっています。特に、「まちづくり」という言葉に流れそうになる場面でも最後には踏みとどまり、「本書は、このようなまちづくりの時代における都市計画を学んでいただけるように意図して以下のように構成している」(p10右段)と、「まちづくりの時代における都市計画」という独特な言い回しで「都市計画」を主役の座に置いています。

第二。タイトルには「図説」という言葉がついていますが、普通「図説」というときイメージするような、図が中心となる解説のような内容ではありません(学芸出版社の「図説 建築」シリーズの中の1冊であるため「図説」とうたっているものと思われる)。確かに図や写真はたくさんついていますが、読んで理解できる(おもしろさを感じる)「充実の一冊」(表紙とびら)だと感じます。

第三。第10章と第14章が特に特徴的で「進化」を感じます。第10章のほうは「分野別のまちづくり」8章分のうちの1章の位置づけなのですが、「パブリックライフの計画」という思い切ったタイトルがつけられています。従来、「分野別」といった場合、「住環境」「公園・緑地」「都市交通計画」「防災・復興」などのいわゆる部門別計画のような内容になっているのが普通でしたが、近年の公共空間の質向上への関心の高さや実績の蓄積のうえに、新たな切り口で都市計画「分野」そのものに1章を起こしています。この第10章そのものがたいへんしっかり書かれており、参考文献も多く示され、たいへん勉強になりました。第13、14章も「従来の都市計画教科書とは取扱いが異なりこれからの時代に合わせて都市計画で学んでいく人に学んでほしい部分で、本書を特徴づけている」(p11)と解説されています(内容は見てのお楽しみに)。付け加えると、「主に法定の都市計画・事業」として構成されている第2~5章の中で、特に第5章「市街地開発事業と都市再生」では、最後のほうに「プレイスメイキング」や「エリアマネジメント」などが「多様化する都市再生の取り組み」との項を設けて組み込まれており、この部分にも「進化」を感じます。第14章は独立した扱いで「都市調査・都市解析」についてかなり実践的に書かれていて読み物としても興味が湧きます。

 

最後に。「都市計画」を説明する最もポジテイブで強いメッセージと感じた次の一文を紹介させていただきます。序章の第1節第5項。「これらは、もちろん都市計画だけで解決できる課題ではない。しかし、都市計画はこれまでがそうであったように、これらの課題に果敢にチャレンジし、都市社会を支えていく学問であり、技術である。都市計画は、これからも都市における課題解決、および問題発生予防のための学問であり、技術であり続ける」(p9)

 

[関連記事]

『都市計画学 変化に対応するプランニング』

 

🔖検索    「教科書」