「TOKYO強靭化プロジェクト」(東京都2022.12公表)と耐震化促進

さきほど手にした『日経アーキテクチュア』2023.4.13号に、「TOKYO強靭化プロジェクト」の話が出ていました。本日取り上げたいのは『日経アーキテクチュア』のp40-41に紹介されている木造建物の新たな耐震化助成の話ですが、少しさかのぼってこのあたりのことを整理します。

本ブログでは2022.6.22の「首都直下地震等による東京の被害想定から考える3つのこと」において、どうしても地震⇒火災⇒被害のイメージが固定化してしまうけれども、500頁近くもある「被害想定」レポートをよく読んでみると、建物被害(倒壊等)による被害が火災被害より大きいこと、特に、阪神淡路大震災がそうだったように、まだ家で寝ている早朝に直下地震に見舞われると建物被害が最も大きくなることを強調しました。耐震化は喫緊の重要課題であると。

今回の『日経アーキテクチュア』でもp40の[図2]で示されている「現況」の「死者3200人」というのは火災被害が最大(死者2482人)となる「夕方」のケースであって、「早朝」のケースでは死者は4916人と想定されている(早朝の火災による死者は671人)。火災被害は4分の1くらいになるが建物被害は1.5倍以上となる。

今回の『日経アーキテクチュア』の記事では、1981年の新耐震基準が100%クリアできれば死者約3200人は約1200人に減らせるが、さらに今回の「TOKYO強靭化プロジェクト」で打ち出された施策を追い風に2000年基準をクリアできれば約500人へと死者を減らすことができることを紹介しています。そのため東京都では1981年以降の建物であっても耐震化を支援する、というのが「TOKYO強靭化プロジェクト」の目玉事業の1つになっている、と。

「夕方」の場合、3200人⇒1200人⇒500人へと2700人の尊い命を救うことができる。これを「早朝」にあてはめると、4916人⇒1768人(2022.6.22の本ブログ記事の計算)⇒737人(単純に12分の5倍する)と、4000人以上の命が救える。

 

「TOKYO強靭化プロジェクト」は風水害や噴火、新感染症などのさまざまなリスクに対して強靭な都市にします、とのビジョンを示したものとして先進的かつタイムリーな内容が含まれていますが、「耐震化」は地味な施策ではあっても効果は大きい。

接道不良のため建て替えができない敷地の存在がネックとなって耐震化の推進もそう簡単ではない、といった課題にも皆が知恵をしぼって取り組みたいものだと、改めて本日届いた『日経アーキテクチュア』の記事で考えさせられたところです。(耐震化施策で建替えが進めば防火対策にもなり逆も真なりと思われる。どの程度両者がリンクしているか、より効果の高い施策はどのようなものかについて興味がもたれるところ)

 

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