『都市と緑の人類史』(都市は進化する197)

明けましておめでとうございます。本年も一年間、どうぞよろしくお願いします。

2024年の第一話は、今、都市が向かいつつある新しい方向について。

「日経サイエンス」の2024年2月号の書評欄(正確にはサイエンスライター「森山和道の読書日記」)にこの本が取り上げられていて、飛び付きました。原題は「Urban Jungle」。日本語タイトルでは大きすぎ、原題では過激すぎるように見えるその内容は、「都市を再野生化させる。未来の都市生態学へ。」とする帯の解説が最も的確に示していると思います。

ベン・ウィルソン著(森夏樹訳)、青土社2023.11.10刊。

 

「都市が気候の危機に耐えるためには、河川の再自然化、湿地帯の復元、干潟の再生、日陰になる都市林が必要だ」「二一世紀の都市は、自衛の意味も込めて、より環境に配慮した都市へと変化していく傾向にある。都市と野生の境界線は、ますます曖昧になっていくだろう」(はじめに、p16)との視点・スタンスで書かれた、グローバルな視野をもつ事例満載の魅力的な本でした。特に、「より環境に配慮した都市へと変化していく傾向にある」の部分が「いくべきである」ではなく「傾向にある」となっているところが特徴で、郊外宅地開発の庭も、都市内部のオープンスペースも、生物多様性の観点からみると意外にも高い数値を示すことが読み解かれるなど、「べき」ではなく「ある」のエビデンスを多数集めて「都市の進化」を読み取っていく姿勢にワクワクします。

 

「水は海に向かって流れる」「水辺を遡る」といったこのところの本ブログテーマについても「5 生命力」の形で都市河川が取り上げられ、汚濁都市河川の再生事例も含まれていて、ヒントが得られそうです。

「都市における自然のプロセスや動物の生態についてより深く知ることで、私たちはきっと、都市の世界を自然から切り離すのではなく、自然の中に存在するものとして、まったく違った見方をするようになるはずだ」(エピローグ、p325)。

 

まずは、都市の生態をじっくり観察してみよう。ミクロにも、マクロにも。

 

 

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