『カワセミ都市トーキョー』(都市は進化する201)

本年1月11日にUrban Walk「川辺を遡る」をはじめたところですが、本日、『カワセミ都市トーキョー』という、本ウォークにピッタリの新書を見つけました。平凡社新書1049。2024.1.15刊。

p53に示された「カワセミ生息の後退図」によれば1950年頃までには見かけなくなった古川-渋谷川流域のカワセミですが、気づいてみると身近にみられるようになっていた、と。

著者(柳瀬博一氏)の分析(と推測)によると、一度絶滅した川辺のこうした生物が「新しい野生」として復活。同じカワセミといっても「古い野生」としてのカワセミとは生息方法が異なり、食べているエサもほとんどが新たに入ってきた外来生物となっている。ここから考えると、「新しい野生」としてのカワセミは絶滅危惧種のようなものではなくむしろこれから都市トーキョーで人間と一緒に共生していく野鳥になるのだと。

 

いくつか、「川辺を遡る」の視点として共有できそうなポイントをあげてみます。

第一。こうした「新しい野生」としてのカワセミが見られるようになったのは「小流域源流部」といえそうな小エリア。「川辺を遡る」の流域図でみると、かなり遡った末端の、どちらかというとこの図にもあらわれていないような末端の、キレイな水が得られる場所。

第二。実は、第一の説明はむしろ水が湧き出す側から説明したほうがわかりやすい。p228-229には「カワセミがいる東京の「小流域源流」の街」という表が掲載されていて、32の「場所」が示されています。古川-渋谷川(この本での表記は「渋谷川」)はうち8カ所と最も多く、2番目が神田川の4カ所。8カ所の源流となっているのはいずれも庭園のあるよく知られた場所です。①有栖川宮公園、②白金自然教育園、③根津美術館、④六本木ヒルズ毛利庭園、⑤国際文化会館、⑥明治神宮・代々木公園、⑦鍋島松濤公園、⑧新宿御苑。これらは「分水嶺=尾根あるいは台地」のような「その地域ではいちばん標高が高く、地盤がしっかりしていて、洪水に遭う心配もない」(p234)。

第三。なかでも最も早くカワセミが戻ってきたのは、自然の状態をしっかり残していた②の白金自然教育園と皇居とされます。

第四。とはいえ「新しい野生」としてのカワセミが戻ってくることができた背景には、その近くに「古い野生」が絶滅せずに残っていた。それらは「新しい野生」のエサとなるなどの形で新たな生態系の創成を助けた。(第三であげた場所があったことも生息域再生に役立った。)

第五。第二の点は、まさに江戸がつくられた際に屋敷の適地と考えられたところで、その後も「居住」に最も適した場所として引き継がれてきた。

 

以上の「見立て」にはまだまだ仮説の域にとどまる部分もありますが、「川辺を遡る」の最終地点での新しい現象・動態・切り口を示している予感がします。それとともに、新しい開発も、こうした新しい生態のしたたかな「生きざま」からヒントを得ることで、より持続的で質の高い空間へと進化できるのではないかとの期待をもつところです。

 

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