アメリカ大都市の死と生(全訳版)

2010年にはじめて全訳された「都市論のバイブル」。原著の出版は1961年。はじめて通読して、ジェイコブズの凄さを実感しました。第一部が観察にもとづく歩道や公園の重要性の認識。第二部がそれらから導き出される4つの規範。ここまでが1977年黒川紀章訳(SD118)に訳されていた部分。しかしその「あと」が重要で、第三部が一部・二部の知見を主に動態的に考察した部分。「脱スラム化」の部分は前向きで緻密でうならせる内容。「多様性の自滅」は冷静な分析に圧倒されます。これで終らず第四部の政策論・計画論では、一部・二部・三部を踏まえて複雑系(訳では複雑性)の観点から具体的提言を満載しています。これを50年前に「一介のおばさん(訳者解説の言葉)」が書いたとすると私はいったい何すりゃいいの?という思いよりも、2011年を生きている私たちもこういう仕事しなくちゃね、という力が湧いてくる名著でした。