市場を創る バザールからネット取引まで

ジョン・マクミラン著(瀧澤弘和ら訳)、NTT出版2007刊。
「アールスメールというオランダの村にある世界最大の花市場を訪れると、サッカー場125個分もの広大な敷地を色とりどりの花々が覆っている様子をみることができる」「グローバルな花市場のプロセスは非常に洗練されたものではあるが、その核心…競争的な売りと買い…は文明の歴史とともに古いものである」といった文章で世界中の<市場を創る>話が語られる本書の魅力はやはり、多様で具体的な「市場(いちば)」と、概念的で抽象的な「市場(しじょう)」とのつながりが直観的に理解できる点にあると思います。
また、「市場」が円滑に機能するための5つの要点(①情報が円滑に流れること、②財産権が保護されていること、③人々が約束を守ると信頼して差し支えないこと、④第三者に対する副次的影響が抑えられていること、⑤競争が促進されていること)が最初の<序>の部分に書かれていて、世界中の豊富な事例にもとづく市場設計の成功例や失敗例がこれら5つの観点から縦横無尽に語られています。私たちが何かの問題に直面したとき、これらの事例のどこかに解決策が見つかるのではないかと期待できる図書でもあります。
「右肩下がり」のなか大地震にも見舞われ欧州経済も芳しくない不安定な2011年の年末ですが、小さな<市場を創る>積み重ねが元気な社会をつくる1つの柱と信じて本書をお薦めします。