商店街はなぜ滅びるのか

新雅史著、光文社新書582、2012.5.20刊。
前回に続いて、たまたま同じ光文社新書です。新氏は1973年生まれ、前回の中川氏は1974年生まれ。ちょうど40歳前の、元気さと論の新鮮さが光る世代です。昭和に言い換えると48年と49年。ちょうど‘第一次オイルショック’により日本の高度経済成長が終ったとされる頃です。
今回の図書のおもしろさは、私たちがその存在をあたりまえのように捉えている「商店街」が、実はかなり最近になってつくられた存在であるとの議論を展開している点にあります。中身の解説は著者に敬意を表してやめようと思っていたところ、朝日新聞(6月24日)に、この本の要約ともいえる書評が掲載されました。
さて。本書の副題は「社会・政治・経済史から探る再生の道」。本書は最後に「みんなで議論すべき時期に来ているように思う」と結んで終っているので、「再生の道」のための課題提起書の段階、ととらえられます。つまり、本題はあくまで「商店街はなぜ滅びるのか」の分析。この部分をイノベーティブに議論した点に注目したいと思います。
課題提起という意味でまだ気になっているのが『地域再生の罠』(ちくま新書853、2010.7.10刊)。巷で「成功事例」とされた全国の地域再生事例が、その後訪ねてみると「成功」とはいえない状況になっているという課題提起書です。この場合、「その後訪ねてみると」の部分がたいへん重要で、持続的な都市・地域づくりのためにはどうしたらよいのかを問いかける書となっています。いわゆる再訪モノとしては第46話や、ある意味第23話にも通じます。しかし話としてはより深く、「かつては良いとされたものが悪いと評価される」ことだけでなく、「かつては悪いといわれていたものが良いと評価される」ことや、「かつては良いとされたものが悪いと評価された。しかししばらく経つとまた良いと評価された」ことだってあります。本当のイノベーションのためには、一時的な良し悪しを超えて受け継がれる何かを見極めることや、持続的に「良い」状態に維持するための方法をしっかりと確立すること、逆に、旧弊にとらわれず思い切って新たな次元を切り開くべきポイントを見極めることが重要なのだと思います。