A HISTORY OF FUTURE CITIES

第100話は、未来都市の歴史。Daniel Brook著、W.W.NORTON & COMPANY、2013刊。
21世紀から22世紀に向かう最先端都市を考えるために、「未来都市の歴史」を、それらの特徴が最も純粋に表れると考えられるその発端にさかのぼったうえ、今日の各都市の読み方を探る興味深い図書です。サンクトペテルブルグ、上海、ムンバイ、ドバイが物語の対象。
18世紀から19世紀にかけ、「遅れた国」ロシアの皇帝となったピョートルはアムステルダムを模した国際都市を建設してモスクワから首都を移し、19世紀後半の時点で最も国際化していたといわれる上海は列強国が自由に出入りし利益をあげられる開放的・先進的な都市となり、ムンバイはセポイの乱のあと現地インドの文化を重視しつつイギリス風近代化を取り入れ世界中の人が交差するコスモポリスとなっていました。この時点での国際化は「西洋化」であり、それぞれ最も純粋かつ先端的な形で「未来都市」は誕生していました。
しかしその後、劣悪な労働環境や不平等・不公正への異議申し立てからはじまった民主化運動やそれに続く革命・戦争等によって国内は混乱状態となり、やがてこれら3都市はロシア、中国、インドそれぞれの風土・文化に根ざした都市へと変容しつつそれぞれの形で国際舞台に復活しました。
これに対して、20世紀終盤から21世紀初頭に頭角を現したドバイは「西洋化」ではなく当初より「世界化」をめざす未来都市モデルとして現在急成長中。その実像が語られます。
このドバイという都市。ヨーロッパやアフリカと、アジアの急成長地域を結ぶ回廊の要に位置していることが地図をみるとよくわかります。例えば「flightradar24.com」というサイトをみると、地球上で現在飛行している何千もの航空機が地図上で把握でき、ドバイ国際空港に発着する飛行機が密度高く列をなしているさまが確認できます。極東に目を転じると、特に北米方面から太平洋を渡って成田、浦東、仁川等に向かう航空機の列が確認できます。このサイトで航空機の動きをみていると、現在の、そして少し未来の世界の都市の活動の様子が見えてきそうです。<都市イノベーション読本2.0、おわり>