八戸からいわきまで:公共交通の復旧・復興を軸に

1年前とくらべると被災地へのアクセスもかなりしやすくなってきました。「復興」というより「復旧」に近い状況で、復興庁がほぼ毎月更新しているこの分野の取り組みも「鉄道の復旧状況」となっています。
とはいえ、まちづくりの観点からみると、被災前からあった過疎化やそれに伴う公共交通の衰退の問題と正面から向き合う必要性が高まっていたり、復興の過程で大規模小売店舗が計画され都市構造が大きく変わる状況が見込まれるなど、「復旧」とも「復興」ともニュアンスが異なる状況が生まれているように思います。また、公共交通手段が回復・強化されることそのものが復興を進めるための支援になっている面も強いと思われます。
第一に、三陸鉄道北リアス線南リアス線ともに来春(4月頃)運転再開予定とされていて、現在の代行バス区間が解消される見込みです。
第二に、JR山田線、大船渡線気仙沼線のうち大船渡線気仙沼線の不通区間はBRT運行による仮復旧(大船渡線は2013.3.2から、気仙沼線は2012.12.22から)で昨年と比べるとかなり便利になりました。たとえば南三陸町「JR志津川駅」は大きな駐車場をもつ仮設商店街(「南三陸さんさん商店街」)に駅を設けていて、鉄道駅と道の駅が合体した新たな都市拠点のように機能しています。陸前高田駅は高台に移転した市役所前に設けられ、小さなハブとして機能しています。ただし数日前に、中心市街地から1キロほど離れた地点にイオンが計画されていることが報道され、幹部が「「中心商業施設を目指す。郵便局も地元商店も近くに来ればいい」と、まちづくりの青写真を語った」(毎日新聞2013.8.24)といった状況にもあり、BRT自身が「仮復旧」であるように、復興計画自体も動的対応が必要と考えられます。また、気仙沼線自体が「最後の国鉄線」としてなんとか開業した柳津- 本吉区間を含んでいて、気仙沼方面からのBRTの終着点である柳津駅の接続もそれほど良いわけではなく、被災前からの課題を含んでいると考えられます。
山田線区間はBRTでの仮復旧自体が鉄道の廃線につながると危惧する地元と、鉄道の復旧費用はJRだけでなく国ももつべきとするJRと、復興後の経営を考えると国費の投入に慎重にならざるを得ない国側との調整が続いています。この区間にある大槌町ではいち早く地元スーパー「マスト」を中心とした拠点が立ち上がり、山田町でもこの1年間で仮設店舗街等によりにぎやかさが戻りつつあるように感じます。
第三に、復興まちづくり事業との関係で復旧・復興が見込まれるのがJR石巻線浦宿-女川間(復興方針検討中)、JR仙石線高城町-陸前小野間(平成27年度中の全線運転再開めざす)、JR常磐線浜吉田-相馬間(平成29年度春頃の運転再開めざす)です。これらはいずれも大きくみると仙台大都市圏における復興ともとらえられます。
第四に、原発区域を通るJR常磐線の不通区間があります。現在不通区間となっている南相馬-広野間のうち、南相馬-小高間(⇒2013.5.1記事)および広野-竜田間(⇒2013.7.22記事)については「避難指示解除準備区域」の解除をにらみながら運転再開の準備中と考えられますが、放射線量がまだ高く町の復興にも時間がかかりそうな小高-竜田間の具体的情報がありません。上記の第一、第二、第三の復旧・復興および復興後の地域運営上の課題とは全く異なる課題をかかえています。
以上のように、3.11から2年半を経過しようとしている現時点において、復旧・復興の状況そのものも重要であるとは前置きしつつ、被災前の現実や復興後の地域運営も含めて同時進行的に復旧・復興を考えなければならない状況も具体的に見えてきていると思います。

[参考]本ブログの東日本大震災復興計画・復興事業「★統合ファイル