ロンドンオリンピックスタジアムの「その後」

7月7日のツールドフランスの選手たちがロンドンオリンピックスタジアムの横を駆け抜けているとき、解説者が「ただ今、スタジアムは改修中で、はずされたシートは2016年オリンピック開催地のリオに運ばれます」と(たしか)言っていたのを聞いて、その改修内容を確かめてみることに。すると、そこにはイギリスらしいなんともしたたかで興味深いストーリーがぎっしり詰まっていることがわかりました。
確かに当初は、オリンピック開催時の座席数80000を、終了後は25000に減らす画期的な工夫などと言われていましたが、既に2010年8月18日には、ポストオリンピックのスタジアム利用者の選定作業がスタートしていました。大会2年前です。紆余曲折があるので面白い点だけ圧縮すると(Wikipediaの英語版にかなり詳しい)、
1)地元ニューアム区に本拠地のあるサッカープレミアリーグのウエストハムと、北ロンドンに本拠地のある(距離はさほど離れていない)同じくトッテナムが争った。既にこの時点でウエストハムは6万席、トッテナムは8万席を維持する計画だった。
2)結果はウエストハムに軍配があがったのだが、トッテナムはこれを不服として裁判沙汰に。
3)一方で、25000席での利用を模索する動きもあった。
4)しかしいざ実施の段階になってウエストハム案は破たん。振り出しに戻る。
5)やり直しとなり、2012年2月の段階で16団体が関心をもつ。
6)そうこうしているうちに会場の管理者はLLDC(ロンドンレガシー開発公社)に移り、公社は市長直轄組織であるためロンドン市長がリーダーとなる。
7)以下、またまたいろいろな経緯があり、結果、ウエストハムと地元ニューアム区が利用する方式を編み出し、UEFAのカテゴリー4の基準を満たす54000席のスタジアムに生まれ変わることに。

現在のLLDCの公式ホームページには、2016年に改装後のスタジアムがオープンすること、地元コミュニティは年間250日以上利用することになること、などを説明しています。サッカーの聖地ウエンブリー(90000席。多目的)と、ラグビーの聖地トゥイッケナム(82000席。ラグビー専用)を既にもつロンドン(イギリス)ならではのイノベーティブな選択だったと思われます。

[関連記事]
「チェルシーがバターシー発電所をサッカースタジアムに?」