ローカルデモクラシーに与える近隣計画の4つの効果

さきほど届いたTown and Country Planning 2014年9月号に、近隣計画が実践され始めてから、おそらくははじめてとなる、近隣計画が地域民主主義に与える実際の効果に関する研究結果が紹介されています(p380-383)。
調査したのはリーズメトロポリタン大学。近隣計画の実践によって、4つの効果があらわれだしたと整理されています。
1つはそもそも政治に参加する術やきっかけがなかった人々に、声をあげ参加できるきっかけを近隣計画がつくったというものです。
2つ目は近隣計画を策定する際にはそのエリアを決めなければならずそれが地方自治体により認定されなければならないため、その手続きの中で、自分達の近隣とはどの範囲かをめぐりかなり議論がなされること自体に意義があるとされます。例えば古くからのパリッシュが当然そのエリアが自分達のエリアだと思っていても、実際には高速道路ができるなどして生活圏は変化しており、改めて計画すべき「近隣」とはどの範囲かが議論になるなどです。
3つ目は、「ローカルデモクラシーのルネッサンス」と評されるように、近隣計画をきっかけに、議員や住民が自分たちの地域を真剣に考えるようになり、複数の近隣が連合して計画を検討しはじめたケースも増加。また、「近隣フォーラム」という新たな主体も認定により近隣計画の策定主体になれるようになったことで、そうした法的根拠がなかった以前とは大きく変わったというものです。
最後に4点目として、近隣が主体となってマーケットに向かい合うケースも増えている点です。たとえばコミュニティの資源となりうる施設等をコミュニティ拠点として整備したり(⇒ACVの話)、宝くじ基金(⇒関連記事)を近隣計画の実現財源にするなど、地域が主体となったまちづくりが進みだしたと評価されています。
既に1000を超える近隣での活動がはじまったといわれる現時点で、上記4つの点から評価されるさまざまな近隣の具体例があげられています(調査されたのは25の地域)。
ややプラス面のみが強調されすぎているきらいもありそうですが、むしろこの調査のねらいはプラスの可能性を評価することにあったととらえると、なかなか興味深く、かつ、実際に動き始めた実例を分析したという点で、現時点での貴重な調査結果になっていると思います。いずれにしてもこの記事の著者は「個人的見解」としているので、正確には調査レポートそのものを手にして読む必要があります。

[11/12追記:上記レポートを前後して、2014年5〜6月にかけ実施された近隣計画の進捗状況の評価レポートがレディング大学から出ています。
http://mycommunityrights.org.uk/blog/neighbourhood-planning-research-report-released/]

[参考]本ブログのイギリス最新都市計画「★統合ファイル