『錯乱のニューヨーク』(文庫版)

ベルリンの壁崩壊25周年ミニ特集第2回。
2年生のデザインスタジオでT先生がこの本を推薦した(?)との不確かな情報を得て、そういえばこの本は文庫本になったときに買った覚えがあるのに内容は記憶にないことを反省し、探してみると、前から20頁ほどのところに読むのを断念した跡が、、、
コニーアイランドに行ったときのことを思い出しながら最初から読み始めると面白くなり、今度は最後まで読むことができました。
本書は、資本主義とはこういうものだというルーツである(正確にいうと“ルーツ”は『諸国民の富』(アダムスミス⇒関連記事1)だとすると、錯乱のニューヨークは“ツール”の話??)、2028個の街区の集合であるマンハッタンという資本主義装置の上に展開する不動産開発物語。書かれたのは1970年代末(1978)ですが、その後間もなくベルリンの壁崩壊により世界が資本主義一色となり、世界中の都市が、あらわになった“錯乱のニューヨーク”状態になっていきます。
都市計画の領域に踏みとどまってながめると、そもそもアメリカの自治体は日本のような(上から与えられた)公共団体ではなく、共同利益を守るコミュニティのようなものでした。それは郊外自治体に明確にあらわれていて、共通の利益をもつ者同士が町をつくりゾーニングを定め消防や警察も自衛のために設立して自治体を運営したものです。マンハッタンのゾーニングにも似た面があり、それぞれの不動産価値を保全するためにゾーニングをしているのであって、一般に言われているような用途分離のためなどのお題目のためではない(⇒関連記事2)。そう考えると、『錯乱』しているようにみえるニューヨークも、まさにそのこと自体が自然な資本主義の営みだということなのでしょう。
しかしこんなことばかりしていて都市は大丈夫なのでしょうか。その手がかりは明日の最終回で。

[関連記事1(上)/2(下)]
・「アダム・スミスとその時代」(都市イノベーション2020 第51話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20140916/1410839084
・「THE EVOLUTION OF GREAT WORLD CITIES」(都市イノベーション読本 第74話)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20121218/1355812601