ドバイ開墾(6) : ブルジュ・ハリファ

リーマンショックに見舞われながら、2010年にとにもかくにも完成したブルジュ・ハリファ(「陸のエマール」による開発)のメッセージはシンプルです。
世界一高いビルであること。

けれども単に高いということであれば、それはきわめて短命で、既にドバイ内でもナキールタワー1250m(塔部はさらに高い)が名乗りをあげ、サウジでは1600mのキングダムタワーの発表もありました。
人間の、高さへの欲求には限りがありません。

それでもこのビルには、たとえ今後高さでは抜かれたとしてもいくつかの魅力や逸話が残ります。主観的にあげると、
第一。リーマンショックでドバイの政府系デベロッパが苦境に陥ったとき、隣のアブダビから支援があり、この塔の名前も急遽変えて完成させたこと。首都を擁するアブダビは石油資源も豊富で、UAEの大統領も務める現アブダビ首長(ハリファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン。なお、「ブルジュ」は「タワー」の意味)は、他の首長国の支援を惜しまないといわれています。カタールバーレーンが独立しても、残りの首長国でまとまりUAEという連邦形態を選びとったことの象徴的出来事ではと思います。
第二。建物として自然で、かつユニークです。威圧感がなく、むしろ、これまであげてきたドバイの「パイオニア精神」を表現していると感じます。
第三。一帯は「ダウンタウン」と呼ばれる複合開発ゾーンで、まだ建設中。象徴性とともに利便性や都市の構造も考えられているようです。
第四。第2話で書いたとおり、この建物の展望階に立った瞬間に、ドバイという都市そのものが直観的に理解できるとともにその光景に感動します。この感覚は、他の都市の類似の場所に立ったときのそれとはまったく違うものでした。

けれども、確かにこのままいくとドバイは、「奇抜なだけ」「成金趣味」「金持ちだけのための都市」とのイメージを脱することができなくなるかもしれません。最近だけでも続々と「世界一」のビッグプロジェクトが発表されています。

少し間をあけ、これからのドバイについてさらに考えてみます。