ドバイ開墾(9) : 地球温暖化とドバイ

アブダビ空港の隣に環境未来都市「マスダールシティ」が建設途上です。2006年に発表されたこの計画。リーマンショックの影響でかなり工事が遅れ2025年をめざす計画に改定されたようですが、最近になって、徐々にその成果がみえてきたという報告が増えてきました。
砂漠の中のスマートシティに挑戦するこのプロジェクトに注目が集まります。

ところで、最近ドバイで発表される都市開発には2通りあり、1つは開発全体を屋根で覆ってしまうもの。現実のモールはこのように進化してきました。それがさらに大規模化しており都市スケールのものも提案されています。あの暑さを体験したあとでは、こうした開発がいけないものであるとは到底言えません。
もう1つは「マスダールシティ」的な方向をめざすものです。
「マスダールシティ」では多くの項目を実験的に同時に満たそうとするいわば“フル装備型”のモデルのため、ここでは、(7)とのつながりを念頭に、もう少し一般市街地にも応用できそうな方向を考えてみます。
第一。足元の集合形式を工夫する。広くない街路空間や回廊などにより陰をつくり風の通り道を工夫する(現実的にはこれに空調を補完させる)。これらにより夏場でも「それなりに過ごせる」場所になりうる。マスダールシティの空間構成も基本的にはこれ。一番困るのは日照りに晒される大きな空間で、ニュードバイに典型的にみられます。
第二。第一の点を意識して、ある種の固まりをつくり、それが集合していく市街地をつくる。ニュードバイでは地区スケールまでくると近年、メトロやトラムによりアクセス性が向上しているので、さらにそれらを進化させつつ、地区内部の空間構成をさらに考えていく。
第三。マスダールシティでは砂漠からの熱風の侵入を阻止するため市街地の周囲を壁で囲んでいる(囲んでいく計画)らしい。
実際にはこれらに加えて建築材料や設備等のさらなる工夫がたくさん加わって“フル装備型”のモデルになっていくものと思われますが、できれば建築・街区・都市の空間構成としての基本を、例えば「砂漠都市版ニューアーバニズム」として定式化できないものかと思います。

いずれにせよ、砂漠の中で持続可能な現代都市づくりをすることそのものがイノベーションといえなくもありません。
47度の気温に晒されて、とある交差点付近でみかけた次の風景に、年間雨量87ミリの現実の過酷さを強く感じたのでした。
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