Sunken cities (アレクサンドリア開墾)

「都市イノベーション開墾」(第1話〜50話)を受けて、本日より、「都市イノベーション開墾2」をスタートします。都市イノベーションを“開墾”しそうな話題を世界中から見つけ出して(実際には日々の生活の中からこれぞという関心事を抽出して)、書き留めていきます。

第51話。
先週、大英博物館で「Sunken cities : Egypt’s lost worlds」展がはじまりました。ホームページを開いてみると、海底に眠る都市の中から像を引き上げる、神秘的というか心ときめくというか、現代に生きる自分を一瞬忘れそうになるショットが出ています。このたびの展示はアレクサンドリア近くの「Herakleion」と「Canopus」という古代エジプト都市が、ナイル河デルタ地帯の液状化等により海底に沈み込んでいたものを、近年の水中考古学や空間認識技術等の発達によって「発見」し、引き揚げ作業を行った(作業後は元に戻す)成果を大規模に展示するもので、11月までの半年間開催されています。

話は飛びますが、昨年、『アレクサンダー』という映画を観て、自然に、アレクサンダーを撃退した古代インド文明のみならず、古代アレクサンドリアへの興味が湧いてきました。本ブログの『十二世紀ルネサンス』、あるいは2009年の映画『アレクサンドリア』などにより、現代科学の基礎を築いたアレクサンドリアという都市の魅力にますます引きつけられていたところです。
このたびの大英博物館の展示はそのアリクサンドリアが繁栄する一歩手前の時代の交易都市についての考古学的成果のようです。この考古学チームは20世紀の終わり頃に、アレクサンドリアそのものの海中に没したエリアの考古学的成果をあげていました。

都市の繁栄とははかないもので、現代につながる数々の科学的成果をあげたアレクサンドリアも、学芸に力を注ぎ文化・科学の拠点をつくった3代の王が去ると力を失い、映画『アレクサンドリア』でとりあげられたキリスト教による迫害や、相次ぐ地震等により都市は衰退。18世紀末には人口4千人ほどの「アレクサンドロス大王が初めて目にしたときの漁村と変わりない状態に戻ってしまった」(『古代アレクサンドリア図書館の物語』柏書房、2003、p227)とされます。しかし都市とはおもしろいもので、1798年にナポレオンがエジプトに侵入。その後いろいろあって、現在では、人口400万人を超える大都市になっています。
けれども都市というのはさらにおもしろいことに、では、アレクサンドリアの都市の真価は?と問われるとき、やはり古代アレクサンドリアの魅力ではないかと思ったりします。海中に沈んでしまったり、海中に沈んだ古代都市の上に現代のオフィスビルなどが建っていたりして、「本当のアレクサンドリア」についてはまだまだわからないことの方が多いわけですが。