検証・2050日本復活(2)非グローバル化/新グローバル化

ベルリンの壁崩壊以降、一方向のみに突き進んだグローバル化の勢いはとどまらず、「地球上の最も安く生産できる所で生産し、消費地に運べばよいのだ」「知識社会で生き残れない労働者は、地球上で生き残れそうな場所まで移動して働けばいいのだ」風な考え方がどんどん強まってきた昨今、特に2015年から2016年にかけて、それを巻き返すような力が各地で働くのが目立ってきました。
『2050日本復活』では第1,2章を中心にそうした「シミュレーション」がなされているのですが、ここでは章を超えてこのあたりの議論を検証してみます。

第一。「2015年頃、おおかたの専門家は、世界の金融も生産もグローバル化が進むと予想していた。しかしその後、流れは変わって、むしろ国や地域を中心に発展するようになった」(p35)の部分に着目すると、ここでいう「地域」はEUや太平洋地域などへのブロック化を指していると思われます。これは国益を加味した「非グローバル化」ととりあえずとらえられ、ブロック化を通した「新グローバル化」の模索の動きと思われます。
第二。「地域」としてはもう1つ、「都市地域」があって、こちらは『2050日本復活』では触れられていませんが、ベルリンの壁崩壊後の経済システムによって富が集中し(やすかっ)た大都市がP.ホールによって「中世の都市国家フローレンスのようになっている」と言われたような(⇒関連記事)富の偏在傾向はまだまだ続くのかもしれません。これは「従来型のグローバル化」としておきます。
第三。『2050日本復活』では第一のような選択がなされる背景をいくつかあげています。1)リーマンショックEU凋落など、経済のグローバル化だけが先行すると問題が大きすぎるとの反省、2)炭素税導入等で輸送コストが大きくなり世界規模でのサプライチェーン展開が非効率になったこと、3)3Dプリンター等の新技術の登場で消費地に近い場所での生産が有利になったことなどです。これらは「非グローバル化」というより「脱グローバル化」と表現したほうがよいかもしれません。
第四。日本に限ると、2015年に2%ほどだった外国人比率が2050年には「6%に届こうとしている」とされます。これは日本にとっては「新グローバル化」。『2050日本復活』のために求められる人材を積極的に惹きつけるための戦略が縷々綴られています。
第五。原文の副題が「HOW JAPAN CAN REINVENT ITSELF AND WHY THIS IS IMPORTANT FOR AMERICA AND THE WORLD」となっているように、著者の主眼は、世界をカバーするグローバリゼーションの力が維持できなくなったアメリカの国益に沿う形で日本にもっとがんばってもらわなくてはならない、というものです。とはいえその視野は広く、「従来型のグローバル化」「非グローバル化」「脱グローバル化」「新グローバル化」によるグローバルな新秩序のあり方を提起したのが『2050日本復活』でした。

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http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20141126/1416983696