『CITIES IN CIVILIZATION』(その1)Book One

都市と都市計画に関する文明論。Peter Hall著。1998刊の図書を2001年発行のペーパーバック版で読んでいます。「Book One」から「Book Five」にわたる大著です。
「Book One」の「The City as Cultural Crucible(るつぼ)」に続き、以下、「The City as Innovative Milieu」「The Marriage of Art and Technology」「The Establishment of the Urban Order」「The Union of Art, Technology, and Organization」と、都市文明にまつわる個別視点が次第に組み合わさるように議論されていく構成です。

今回の(その1)ではBook Oneについて。
都市の文明をざーっとみると、特定の文化が、ある時代に燦然と特定の都市で花開いたことが見て取れる。なぜか、それはある特定の時代の、特定の都市だけに起こった出来事である。それはどのような出来事だったのか、なぜその都市であって別の都市ではないのか?

Book Oneでは、そのような出来事が最初に起こったアテネからはじまり、フローレンス(ルネッサンス)、ロンドン(演劇)、ウィーン(音楽)、パリ(絵画)、ベルリン(劇場とシネマ)をとりあげて、それはどのようなものだったかを、それぞれについて執拗に分析。さらに、なぜその都市だったのか、それはどのようにして成立したのか、なぜ別の都市、別の時代ではなく、その時代・その都市だったのかを考察していきます。そしてBook Oneの最後において、6つの都市の出来事に共通する、都市文明について考えるうえでの重要な見方について結論を提示します。実際に読んでみると、それぞれの都市における出来事の分析はきわめて具体的かつ執拗で、何度も「こんな長いストーリーを読んでいて、都市計画に関係するのだろうか?」と不安になりましたが、(Book Oneの)最後まできて、これまで認識していなかった、こうした分析を経なければ到達できないであろう場所まで到達していることに驚きました。以下、超要約すると、、、
「特定の文化が特定の時代に特定の都市で花開いたのは、たいていの場合、経済的・社会的な大転換が起こっている只中にある。そこでは、新しいモードが生まれつつある。それが起こる都市は、その時代のいわば中心的な都市である。アテネもフローレンスも、ロンドンもウィーンも、パリもベルリンもそうだった。そこには富が集中し、文化を保護したり消費するブルジョアが成長している。そうした都市には国内外から才能をもった人々、特に若者が集まってくる。そういう意味でその都市はコスモポリタン都市なのだ。こうした新参者は、それまでの古い体制には馴染めず、力を発揮する場がなく、当初は貧乏生活を余儀なくされるかわりに、次の時代を切り開くために全エネルギーを集中する。そのなかから一種の革命的な成果があらわれる。それを後押しするのは、保護者・消費者としてのブルジョア、文化を流通させるシカケや資本の蓄積、その文化を大衆的なレベルにまでに押し上げる批評家やメディアであり、なぜそのようなことが可能かというと、それが起こる直前にはその都市には富が集中していたからであり、ますます集中していったからである。けれどもそのような状態はそう長くは続かず、次の時代へとはいっていく。」

Book Twoは、経済・産業面からイノベーションの場としての都市が分析されます。マンチェスターグラスゴー、ベルリン、デトロイト、サンフランシスコ周辺、東京-神奈川地域との目次立て。楽しみです。

【In evolution】世界の都市と都市計画
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