『CITIES IN CIVILIZATION』(その3) Book Three

「A Marriage of Art and Technology」と題されたこのパートでは、ハリウッドとメンフィスの2都市がとりあげられます。Book OneのArt、Book TwoのTechnologyが、20世紀前半のアメリカにおいて「結婚」し、新しい都市の大衆文化が花開いたとする内容です。
世界を大きく変えた24の汎用技術について以前、豊田佐吉をとりあげた際に紹介していますが(⇒関連記事1)、Book Twoでとりあげているのはおよそ11番目のSteam engine(マンチェスター)から22番目のInternet(シリコンバレー)までで、それらが特定の具体的な場所で、どのようにして花開いたかを詳述しています。そうした汎用技術が開発されるのに並行して、ハリウッドに映画産業が花開きます。ハリウッドを論じる第18章のタイトルは「The Dream Factory(1910-1945)」。ロスアンゼルス郊外のひなびた地に、ニューヨークの既存映画団体とは一線を画すヨーロッパ系移民らが流入。「スタジオ」を中核とする一種の工場大量生産方式によって映画を生産し系列の映画館をネットワークさせて、それまで一般人が目にするのが困難だったArt(映画)を大衆化。一方、メンフィスでは綿花栽培労働者としてのアフリカ系住民の音楽と、アパラチア山脈を越えてミシシッピデルタに流入した下層白人系住民の音楽とが融合してまったく新しい音楽を創造。これも、汎用技術のおかげでレコードやラジオの音楽媒体がArt(音楽)を大衆化。
けれどもハリウッドは「スタジオ」を中心とする巨大システムが、テレビの登場などで維持できなくなり衰退。メンフィスのピークも1948-56の短期間とされます。

ArtとTechnologyが Marriageした20世紀までを一通り描いたこれまでの20章では一貫して、なぜその時代、その都市・地域でそのような技芸が花開いたのか、なぜ別の時代・別の地域ではなくそこだったのかについて分析してきました。その際、ほぼすべての場合において、技芸の生産者と同時に消費者を描き、そこに必然的に生じる流通形態、生産と消費の(空間)を描いています。また、技芸が進化する過程で生じる無数のイノベーションやそれらが世界に与えるインパクトなども示唆します。さらに、「盛」だけでなく「衰」も同時に描くことで、人類史上、1回だけだったその特異性や革新性を浮き彫りにします。

これからBook Four「the establishment of the urban order」に入ります。最後の結にあたるBook Fiveでどのように締めくくられるのか。もうしばらくこの作品とつきあうことになりそうです。

[関連記事]
・『豊田佐吉トヨタ源流の男たち』
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20120131/1327977869

【in evolution】世界の都市と都市計画
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http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20170309/1489041168