(映画)『ジェイン・ジェイコブズ ニューヨーク都市計画革命』

4月の都市科学部の授業で30分時間を与えられ「都市とは」について話すことになりました。その中で、『アメリカ大都市の死と生』(⇒関連記事1)はやはり重要で、特に、近年全訳され追加された第3部の、都市が自らアップグレードしていく(居住者が自らの生活環境を良くしようと努力する)描写は凄いと思うと紹介しました。
4月28日にはじまった本映画は、この古典的名著 を主軸としつつ、以前本ブログでも取り上げた『ジェイコブズ対モーゼス』(⇒関連記事2)の格闘などが映像化されています。緻密な表現という意味ではやはり図書が圧倒しますが、1960年代のニューヨークの様子や、モーゼスが高速道路網のために取り壊していく市街地の姿などを実感しやすいのは映像です。また、ジェイコブズの人となりがこの映像からよく伝わってきました。

「都市計画革命」という副題から見落としがちですが、モーゼスの高速道路を阻止された大きな理由の1つは財政問題でした。超高層公営住宅が荒廃し次々に破壊されたのも(破壊シーンは本映像の中で最も印象的)、計画・設計した空間での生活も、運営管理も困難となったためでした。このことは、反対運動を政治プロセスに載せつつ自らの主張のほうが合理的であると判断させる際の分岐点になっていたのだろうと思います。

半世紀後の私たち。猛烈な勢いで環境が変化しています。1960年代のニューヨークも、ある意味、そのような激変の時代だったのでしょう。ジャーナリストとして、母として、ジェイコブズは近隣の様子、なかでも路上で繰り広げられる人々の様子を毎日観察していました。どの時代にあっても、理にかなっていると信じられることを1つでもつかむことができれば、途はひらけてくるのだと思います。

[関連記事]
1.『アメリカ大都市の死と生(全訳版)』
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20110719/1311046833
2.『ジェイコブズ対モーゼス ニューヨーク都市計画をめぐる闘い』
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20110719/1311047405
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