「2027年度までに東京圏への流入人口超をゼロにする」はどのように可能か? (都市は進化する116)

先週金曜日(12月16日)に「デジタル田園都市国家構想総合戦略(案)」が発表されました。あらゆるデジタル要素をすべて並べた感のある318頁の膨大な資料です。「2027年度までに東京圏への流入人口超をゼロにする」というのはわかりやすい達成指標の1つですが、あまりに多くの施策が318頁の中に詰まっているので、「何によってそれが達成できる」という因果関係ではなく、「こんなにたくさんやるのでなんとかなるのではないか」、という期待というか願望のように思えます。あるいは「2027年度までに東京圏への流入人口超をゼロに」したいので、どれが効果があるかはわからないけれどもいろいろやってみてできるだけそれに近づける、という目安のようなものなのかもしれません。

 

ところで、ポストコロナに向けて東京圏の人口がどうなっているかについて本ブログでは2022.8.30に報告したばかりですが、下表は、その後発表された2022.8~10月分を仮に並べてみたものです。

3か月追加しただけでは「これからの傾向」までは読めませんが、1年前、2年前の同時期と比較すると、かなり「コロナ前」の増加量に近づいてきていると読み取れます。この調子で進むとすると、77956人増⇒88564人増だった2年前、1年前の数字はたとえば10万人増くらいになり、125361人増だった(コロナ前期間を多く含む)3年前に近づきそうだ、というのが想定できる方向です。「2027年度までに東京圏への流入人口超をゼロにする」という目標とは逆の方向に動いている。

[2023.1.30追記    2022.11=+2243   2022.12=+726となり、2022年1年間の増加が99519人となりました。ほぼ10万人増です。2021年の各月と比べると、ほとんどの月で前年を上回っています。]

そのような中で、現在注目しているのは、(案)10-11頁に出ている「「転職なき移住」の推進など地方への人材の還流」の部分です。説明としては(案)の「感染症拡大を契機としたテレワークの導入拡大により、住む場所に捉われない働き方の浸透が一定程度進んでいることを好機と捉え、どこでも同じように仕事ができるよう必要な環境整備を推進することが重要である。具体的には、デジタル技術を活用して地方創生に資するテレワーク(地方創生テレワーク)や副業・兼業による「転職なき移住」を更に推進するなど地方への人材の還流を促し」の部分は賛同しつつ、「地理的・時間的な条件にかかわらずあらゆる地域で同じような働き方を可能とする環境を整える」と(少なくとも2027年度までは)一気にジャンプせず、そのようなことが効果的な「地理的・時間的な条件」とは何かを、特に、「時々東京圏の仕事場に行く」程度のハイブリッド型生活を想定して考えてみることや、そうやって効果的な「地理的・時間的な条件」の中で移住(というより“新しいタイプの転居”)をした人が、新しい地域で刺激されながら新しい雇用やネットワークを生み出すことで地域活性化のエネルギーが湧いてくるのではないかという仮説です。

 

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