2023年になり、「関東大震災から100年」という話を頻繁に耳にするようになりました。先週のとある打ち合わせでも、9月か10月頃にそのようなテーマで小規模なシンポジウムを企画する話になったところです。
このたびのトルコ・シリア地震の最初のM7.8の揺れは250kmの断層が動いたものと推定されていますが、2023年1月1日を基準に算定が更新された「南海トラフ地震」は20年以内に発生する確率が60%程度とより高い値になりました(2022.1.1を基準とする1年前の算定では20年以内の確率は50~60%とされていた。ただし1ケタ変えた表記をみると、54~60%だったものが55~61%へと1%高まったもので、1年経過した分が積み増された形)。「南海トラフ地震」は主として「東海地震」「東南海地震」「南海地震」の要素で構成され、合わせて600~700kmほどの範囲になるもので、マグニチュードだけでみれば格段に大きな地震になることが予想されます(M8からM9クラス)。
本ブログでも2012年8月29日に「南海トラフの巨大地震に関する被害想定(第一次・内閣府)」とのタイトルで「死者最大32万人」と報道されたその想定について書いています。想定はその後も改定されているのですが、改めてこのときの「死者最大32万人」とはどのような想定だったのかを見ておきます。
この値は「東海地方が大きく被災するケース」のうち「陸側ケース」と呼ばれる揺れによる被害が最大となるケースで、「冬・深夜」の場合からとったものと思われます。この条件下では「平均風速」で208000~321000人、「風速8m/s」で209000~323000人の死者となると想定されています。「夏・昼」でも111000~237000(8m/sだと238000)なので、いずれにしてもたいへんな被害です。30万人を超える場合の原因別でみると「建物倒壊」82000人、津波(「早期避難率低」)230000人、火災8600~10000人とあり、どのような被害かおよその想像は可能です。他にも「近畿地方が大きく被災するケース」など3パターンが示されていますが、「東海地方が大きく被災するケース」の上記のような場合が最大被害となるのでそれをとって「死者最大32万人」と報道されたと考えられます。
令和元年の想定では「東海地方が大きく被災するケース」のうち「陸側ケース」で「冬・深夜」の「平均風速」で230000人、「風速8m/s」で231000人と表記されています。2012年の想定では「幅」があったものが1つの数字になっているので、「最大死者は低下した」ともいえるし「下限の想定よりも高めの数字になった」ともいえる。いずれにしても「最大想定死者は低下した」。といっても23万人というのは途方もなく大きな被害です。内訳は「建物倒壊」65000人、「津波による死者」160000人。
「関東大震災から100年」との観点から「相模トラフ地震」だけみると20年以内に発生する確率は「ほぼ0%~4%」と昨年発表の数値と変わっていませんが、首都直下地震(30年以内に約70%)などを考えたとき、この秋のシンポジウムはどのような切り口で議論したらよいだろうかと思案しはじめたこの数日です。