『「世界史」の誕生 ヨーロッパ中心史観の淵源』

この世の中に唯一の世界史というのはないので、いわゆる世界史という意味で括弧付きの「世界史」がいかに形成・変容したかについて書かれた図書が2023.6.30にミネルヴァ書房から出ました。著者は南塚信吾。

聖書に描かれた世界史からはじまって、19世紀後半の帝国主義の時代に描かれた世界史に至るまでの「世界史の世界史」が綴られていてなかなか面白かったです。

直接「都市の進化」を扱ったものではありませんが、いわゆる「ヨーロッパ中心史観」がどのような紆余曲折により形成されたかが7章構成でわかりやすく説明されています。超主観的に面白かった点を書き留めます。

 

第一。多くの歴史家たちが登場しますが、それに加えて世界史に影響を与えた哲学者や思想家なども広くとらえていること。ただし評価のフレームがしっかりしているので、ある作品が先進的であっても別の作品も吟味されると矛盾が露呈されるなど、なかなかそう簡単には自分の生きている時代は乗り越えられないものだと思い知らされます。

第二。時代が進むとその間にいろいろなことが起こるので、世界史の中に次々とそれらが取り込まれていく。そのとき単に1つ加わるのでなく歴史の方法論やその出来事の意味が吟味される。そのような積み重ねが味わい深い。

第三。世界史の世界史観がどんとん開かれグローバルになるかというとそうでもなく時々後退する。立ち止まる。そのあたりの面白さ。

第四。アメリカも力をつけてくるとヨーロッパ的世界史観とは異なる世界史を描くようになりそれが日本にも入ってくる。けれどもアメリカだから進歩的だったかというと後戻りもしているなど、「日本」への「世界史」の入り方が興味深い。

第五。そういう意味で日本に紹介される「世界史」が、日本の記述のあるナシで紹介されたりされなかったりしていたことも興味深い。

 

本ブログでもこの春、「世界の都市と都市計画」「日本の都市と都市計画」双方に目次を振りつつその関係を書いてみました(⇒世界の都市の進化と都市イノベーション)。

この本を読んでみて刺激されたので、そういう目でまた見直してみたいと思います。



🔖検索 「世界史」