「Street votes」をめぐる委員会審議 (「Levelling-up and Regeneration Bill」が国会に上程されました(その3 ))

法案の委員会審議は7月19日まで進み、そのあと長い夏休みに入りました。ちょうどその夏休み前最後の委員会にて第96条の「Street votes」が審議されたので、議事録からその模様をできるだけリアルに抜き取ってみます。

実は「Street votes」は今回の法案で「何、これ?」と興味を持ち注目していた条項の1つで、委員会審議を通してその内容がいくらかわかるものと期待していたものです。

 

最初は大臣の説明。「この条項はplaceholder clauseです」。なんと第96条は「仮置き(placeholder clause)」ということです。それもそのはず。条文は以下のようなメモ書き程度のものです。

The Secretary of State may by regulations make provision for a system that permits residents of a street to— (a) propose development on their street, and (b) determine, by means of a vote, whether that development should be given planning permission, on condition that certain requirements prescribed in the regulations are met.

そのストリートの住民の投票により開発を提案したりその開発に計画許可を与えてよいかどうかを決めることができるシステムを規定できる。細かな点は規則で定める。

 

このあと3人の発言が続きますが、論点が整理されている議員A(労働党)の発言を、超要約してみます。

「私はこの条項に反対するものではないが、こうした「仮置き」条項の多用には心地悪さを感じている。この第96条を見てもほとんど何もわからないではないか。そこで、以下の諸点につき大臣の答弁を求めたい。第一に、なぜこのような超ローカルな新パワーが必要と考えたのか。2011年に制度化した「近隣計画」にはNeighbourhood Development Order(⇒関連記事)という似たような規定があるがほとんど使われておらず、それを失敗とみてそのかわりに考えたものなのか? 第二に、本当に「street」が適切な空間単位なのか。その説明がほしい。第三にこの規定は、ストリートレベルで住宅供給を増やそうとするのが目的なのか? その場合、既存住宅所有者は増築等で得をする一方、持たざる者は利益が無く不公平の拡大になるのではないか。第四に、また新たな規定により自治体の事務量が増えることになりそうだが、十分な手当は考えているのか。第五に、投票というが何人集まれば資格があるのか。1人でもよいのか。通りの何割の人が登録すれば事足りると考えているのか。最後に、マスタープラン(Development Plan)との関係はどうするのか。近隣計画との関係はどうするのか。」

 

大臣は、他にも出た質問等を引き取り、「慎重に考慮しご指摘を受けたレベルの詳しいものを出していきたい」としました。この日は第98条まで審議は進みました。

 

(その1)  (その2)

 

[関連記事]

・Neighbourhood Development Order とはどのようなものか

 (「近隣計画」となった3つの事例を横断的に解説したもの)

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/20181119/1542621070

 

 

本記事を「【研究ノート】Levelling-up and Planning」に入れました。

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/2022/05/18/100512

 

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