「ギグ後に来る未来に備えよ」をめぐって

2020年12月31日の日経「Analysis」欄に森嶋厚行筑波大教授が「ギグ後に来る未来に備えよ」とのタイトルで議論をしています。その記事の中央にある「これまでの組織」⇒「これからの組織」の各図が、この議論の要約にもなっているのですが、ここではこの図を使って、(著者の意図とは離れて)都市の将来の姿を考えてみます。

左の「これまでの組織」はピラミッドが三層になっており、上がDecision Maker 1人。真ん中が中間管理職 2人、下の層が作業従事者 4名の絵になっています。

右の「これからの組織」も三層で、上のDecision Maker 1人は同じです。しかし、真ん中はAIに置き換わり「分業コーディネーター」となっています。下の層の作業従事者は 2名と半減しつつ、減った部分は「AIワーカー」に置き換わっています。しかし下の層から押し出されたスペースに「ギグワーカー」が 2名とAIの図が書かれていて、下の層の総人数では 4名が保たれています。(記事そのものを見るのが一番。)

 

さて。以下は「都市イノベーション・next」的な勝手な議論であることをお許しください。

 

第一。ピラミッドがオフィスだとすると、7人いた絵が3人に減り、AIがたくさん陣取っています。あくまで模式図なので人のいるフロアが7分の3になる、とまでは言えませんが、かなりいらなくなる。AIはクラウドだと考えるとそこになくてもよい。

第二。そもそも「中間管理職」はいらなくなる。恐ろしい気もしますが、現実の方向はそうなりつつある。

第三。作業従事者の半分はギグワーカーになりかつ社外にいる。社内の 2人にもわざわざ括弧書きで「社内・社外」と書かれているので例えば1人ずつとすると、4人いた社内の作業従事者は 1人になる。

第四。このような未来の中でのギグワーカーの位置付けをちゃんと考えましょうねというのがこの論説の主旨と思われます。会社とは何なのか。ギグワーカーは大丈夫なのだろうか、と。

第五。さらにこの図に(特に右の「これからの組織」に)テレワークなどの要素を付け加えるともっとドラスティックに変わる。ピラミッドが会社であるというときの「会社」は組織上の会社ではあるが、オフィスビルそのものではない(かもしれない)。極端な話、皆テレワークで、今まで“オフィスビル”だと思っていたものが大きく縮小しつつ変質する。

第六。以上の議論には生産性がどうなるかとか社会保障はどうしましょうといった要素は含まれていません。不安定なギグワーカーばかりが大量に出現する悲しい図にも見えてしまいます。けれども、7人でやっていた仕事の質をキープしながら3人でできる会社へと脱皮する過程で魅力的なギグワークと補完し合う近未来の図でもあります。さらに、必要な労働(者)が(AIの導入で)かなり減るので、近年の(そしてこれからの)労働力不足に対応できる面がある一方、放置すれば失業者もたくさん生まれそうな図になっています。

 

なお、森嶋厚行筑波大教授の専門は「クラウドソーシングシステム、計算論的分業」と紹介されています。

 

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