『高地文明』

1つ前の『気候適応の日本史』が出たおかげで、昨年読んだままになっていたこの本が復活しました。中公新書2647、2021.6.25刊。著者は山本紀夫。

この本ではこれまでの「四大文明説」に異議を唱え「もう一つの四大文明」の発見を主張するものですが、本ブログとしてのここでのとらえかたは、人類が主として気候適応により高地に住まうようになり、それが地球上のあちこちに見られる。中には独特の「文明」的な規模を有するものもある、との興味です。同様な興味は、「大都市の北限・南限はどこか(寒さもさることながら一日中暗い季節やその逆の季節に人は耐えられるか(どうやって適応しているか))」「雨が降らない場所で人間は大都市をつくれるか(古代ローマだって遠くから水を引いてきた)」、などで、そういう意味で『高地文明』にはとても興味が湧きます。

この本で「四大」としているのはアンデス(インカ)、メキシコ(アステカ、他)、チベット、エチオピア。

 

チベットを除くと、緯度の低いこれら地域の高地は、1)気候的に過ごしやすく人間にも動植物にも疾病等が少ない、2)外敵の侵入から守りやすい、との共通項に加え、高地ならどこでもよいというわけではなく、3)必要な木材資源等に恵まれている、4)水資源が得られる、5)比較的広い場所がとれる、6)高地に適応した栽培植物があり動物がいる。チベットは緯度が少し高いですが、2)~6)は共通しているともいえそうです。

これを気候適応の観点でみると、1)と5)は必要条件としつつ、3)4)は持続的にそうなるように心がけ、6)は品種改良にもつとめて定住をより確実なものとしてきた。2)は望んでそうしたわけではないが、安全保障面で重要。

 

こうした『高地文明』性が、航空機の発達でさらにパワーアップしたとみたのが「アジスアベバ開墾(1) (5)」です。

 

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