五反田バレー (都市は進化する30)

ベンチャー企業オーナーへのインタビュー結果を発表する先日の起業関連大学院授業発表会で、3グループのうち2グループの企業の所在地が五反田でした。たまたまかもと思っていたのですが、今朝の日経新聞で「起業都市への道」の連載がはじまり、「起業」でネット検索していると、「五反田バレー」という文字が。「あった」。

 

数年前から動きがあり、「五反田バレーマップ 2021年版」なるものも出ている。毎年この地図をとっておけばバレーの盛衰(成長?)もわかる。規模はだいぶ違うけれども、シリコンバレーだって最初はこんな調子だったに違いない。大崎にはソニー関連企業も多いので、もう少し引いた目でみれば本物の「起業地域」になりつつあるのかもしれない。

解説をみると、もともと渋谷あたりの賃料が高くなり割安の五反田が注目されるようになりベンチャーの立地が進んだこと、五反田のキャパはそう大きくはなく、ビルも小規模であることがあげられています。まさにベンチャーにはぴったり。交通も至便。

 

東京にはたくさんこうした「起業の街」があるのでしょう。その多様さと数の多さによって東京は進化している。「五反田バレー」のような名が与えられると、本当にそこが起業の街のような気がしてくるのは不思議です。

もう一度「五反田バレーマップ」を見てみると、「コワーキングスペース・シェアオフィス」という凡例もありました。新築・中古を含め、街全体がインキュベーターとして機能するべく変化し、それがまたシグナルとして発信されてベンチャーを惹き付け、さらに進化していく、、、


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【In evolution】都市イノベーションの源泉
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『災害とたたかう大名たち』

『藩とは何か 「江戸の泰平」はいかに誕生したか』(中公新書2552、2019.7.25刊)の続編ともいうべき、重要な本です。

藤田達生著、角川書店2021.4.23刊。

 

「「日本の都市が国土レベルの配置とネットワークを伴って誕生した都市イノベーションそのもの」といえそうな重要な書」とした前著を、「災害とたたかう」との視点を加えることによって、さらに一歩確かなものにした感があります。

これではわかりにくいので、より主観的におもしろかった点をいくつかあげます。

 

第一。これが最もおもしろかったのですが、江戸初期の城下町(および「藩」という経営体)の建設は、その前の戦国時代に疲弊した旧城下町等の復興計画としてなされたとの観点から実証的な分析がされている点です。『災害とたたかう大名たち』には確かに地震災害や飢饉や疫病とどう闘ったかが語られているし、それらはどちらかというと2020年以来のパンデミックと重ね合わせて議論されている風もありますが、やはり本書の核心部分は近世都市成立の部分ではないかと思います。

第二。幕末に近づくと災害とたたかう力も弱くなり、近代化をとげた雄藩が力をもってやがて幕府は崩壊した、との議論もなされてはいますが、やはりこれもメインではなく、「預知思想にもとづけば、天下から預かっている藩の災害復興は藩主の当然の責務」と考え行動する社会基盤をつくりあげたことを諸資料を通して示したことに意義があると思います。預知思想については『藩とは何か 「江戸の泰平」はいかに誕生したか』において既に議論されていますが、本書はそれに災害を重ね合わせて議論している。ただしこの点についても印象としては、「災害とたたかう大名」の側面よりも、新しい城下町という空間が、農村部も含む「藩」という地域の中で安定した役割を果たすために、戦国的身分秩序からいかに近世的秩序へと進化したかの印象が強く残りました。

第三。『藩とは何か 「江戸の泰平」はいかに誕生したか』でもそうでしたが、本書でも藤堂藩の主要城下町が主な題材となっていて、かなり具体的で、なかなか他ではこうはいかない豊富な地域史が分析されていておもしろいです。個人的には(あまり有名ではないかもしれませんが相当おもしろい)伊賀上野という城下町に数年前より注目していて、その伊賀上野の戦国時代から近世城下町への変遷が詳しく分析されているので特上の資料となりました。p94には戦国から近世に移る際に城郭の位置が変わった全国の33の事例が示されているので、各地を回る際に、現代へと連なる近世城下町がどのように誕生したのかをたどることも楽しみに加えられそうです。

 

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【In evolution】日本の都市と都市計画
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「無人コンビニ」

新型コロナが引き金となって、これまでの「土地利用」のアイテムが大きく変化しています。「オフィス」や「マンション」は大きく変容しはじめ、街の中の「書店」や「銀行」の存在感が薄くなり、小規模化した「ATM」でさえ不要となってパン屋さん(特定商品の販売のみ)などが続々と出店し、、と、どこまでいくのでしょう。逆に、個人レベルからみると、現金は使わなくなり、食料品・日用品から調理品、本から家具、家電、などのほとんどのものが配達されるだけでなく、オフィスに行かずにかなりの仕事もできるので、「家」の中に商店街もオフィスもかなりなにもかもあるような状態に近づいているようにも思える。こうして「土地利用」自体が激変すると、「モビリティ」も激変しているのでしょう。既に激変しているので、10年後、20年後の「都市の土地利用」はどうなっていくのか。

 

昨日の日経新聞にも、「「無人コンビニ」続々」「生活圏の小型店続々」「ウーバーイーツ、徒歩宅配を導入」などと、「土地(建物)利用」の変化や「モビリティ」の変化の断片が紹介されていて、特に「無人コンビニ」に刺激されました。

「無人コンビニ」というと、「高輪ゲートウェイ駅」にできた「コンビニの自動化」のような姿や、「売らないコンビニ(街の中で商品基地だけの役割を果たす)」「駅中の極小規模店舗」などがありましたが、日経に出ていた写真は「自動販売機」に近い。既にさまざまなものが出回っているようですが、昨日の記事ではオフィスやマンションの共用スペースに置くタイプのものでした。

これは新種の「自動販売機」だ!

自動販売機は日本にはとても多い。世界一多い気もする。いや、もしかすると日本の自動販売機は商店街かもしれない。いや、「街」というより「商店」である。

などと考えたついでにざっくり調べてみると、、、。日本の自動販売機500万機で売り上げ5兆(1機当たり100万円)、参考のためコンビニは5万軒で10兆(1軒当たり2億)。自動販売機はコンビニの200分の1しか稼げないけれども100倍あるので総額はコンビニの2分の1も稼いでいる。今、普及しだした「自動販売機風無人コンビニ」が近い将来250万機(←少し多めにしておく)入るとすると、自動販売機の2倍稼げたとして売り上げ5兆円。これで、「(仮称)自動販売機連合(無人コンビニ含む)」が10兆、コンビニ10兆。ただし、人口は減少し消費総額はそれほど動かないとすると、パイの再配分にすぎず、たとえばコンビニは全部無くなり(仮称)自動販売機連合に置き換わる。

 

また別の見方もできそうです。これは「集団取り寄せ型ウーバーイーツだ」!

最近、ウーバーイーツタイプのビジネスではコンビニやスーパーの品物や、果ては「何でもピックアップして持って行ってあげます」というものまでさまざまなので、「無人コンビニ」はその変形バージョンともいえる。「無人コンビニ」というより「個人コンビニ」。消費者が徒歩0分で済む一方、配達側にモビリティが発生する。

「生産」「流通」「交通」「配達」「卸売り」「小売り」「サービス」「情報」「生活」「仕事」「娯楽」、、、考えただけで、無限のビジネス、無限の生活スタイル、無限の土地利用の可能性が今後もどんどん広がりそうです。

 

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『ICONIC PLANNED COMMUNITIES AND THE CHALLENGE OF CHANGE』

かつて理想都市として計画され実現された「planned community」が、その後のさまざまな困難にもかかわらずそのスピリットを発揮し今でも輝きを失っていないとしたら、やはりそのオリジナルの都市計画は優れたものであったといえるし、「スピリットを発揮し今でも輝きを失っていない」その秘訣に学びたいと誰もが思うはずです。

2019年にペンシルバニア大学出版会から出されたこの本は、世界の中から19の「planned community」を選定してケーススタディーした貴重な、そしてワクワクする本です。

MARY CORBIN SIES, ISABELLE GOURNAY, ROBERT FREESTONEの3人による編集。

序章と最初の3つのケーススタディーを読み終えたところで、この本のおもしろさと意義を綴ってみます。

 

第一。著名な「planned community」なので各事例そのものは分析対象というよりも考察の「前提」のようなものです(とはいえ、これまで知らなかった事例もあるため事例そのものにも興味が湧く)。やはり本書の見どころは「その後のさまざまな困難にもかかわらずそのスピリットを発揮し」の部分。ここがかなり重要です。特に歴史的な著名な事例を扱う場合、どうしても「せっかく著名な〇〇氏が設計したのにその精神が生かされず残念だ」といった批評になってしまいがちですが、本書では、100点満点ではなくてもジワジワとそのオリジナルのもつ価値を維持増進しようとする力に注目しています。この力に着目することは、すなわち、持続的な都市の進化の秘訣を探ることです。

第二。19ある事例の最初の事例「ニューラナーク」(第1章)がとてもよかったです。超有名な「planned community」だったこの事例は、その原動力だった工場が閉鎖されると衰退。廃墟のようになり一時は取り壊されることにもなったのですが、「なんとかしよう」という力が湧き上がり、次第に大きくなり、1993年に現地を訪れたときにはビジターセンターもできていてそこで説明を聞きました。まだまだリノベーションに着手したての建物も残る中、谷あいのその場所の独特な雰囲気もあいまって、「おお、都市計画の聖地に来たんだ」と感動したのを覚えています。やや主観的になってしまいましたが、章ごとに年表も整備されており、「その後のさまざまな困難にもかかわらずそのスピリットを発揮し今でも輝きを失っていない」ことが縷々語られています。「ニューラナーク」の場合、オリジナルの用途の多くは転用されているのですが、それでも「ニューラナーク」は今でも生きた都市なのです。

第三。「田園都市」第一号のレッチワースは第3章に出てきます。「レッチワース再訪」で四半世紀ぶりに訪れたレッチワースが百年経っても持続的に「生きた都市」であるととらえたことを書きましたが(2018.1.23)、この3章ではさらに、実はさまざまな開発計画が持ち上がっていてその都度なんとかそれらを抑制しようと「精神」が発揮されていることが、まだ未解決のものも含めてリアルに語られています。

第四。「さまざまな困難にもかかわらずそのスピリットを発揮し今でも輝きを失っていない」となるためには、実際、「スピリット」だけではダメです。その物的状態を保全するための都市計画や、老朽化するレガシーを修繕・再生するための資金や、それをマネジメントする体制などが必要です。事例により「スピリット」とそれら諸々のものとの組み合わせや順番や重みはそれぞれと考えられますが、それぞれの事例でどうとらえられているかを知ること自体が楽しみです。

 

まだ19章のうち最初の3章を読んだだけです。日本の田園調布も中ほどに出てきます。1980年代のニューアーバニズムの「イコン」も出てきます。本が重たいので、一度にたくさんは読めませんが、これからが楽しみです!

 

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[関連記事]

・『The Modern City Revisited』

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【in evolution】世界の都市と都市計画
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小笠原 空港物語

いつも使っているS駅構内で、「小笠原諸島特産 島檸檬醤油」という醤油を買いました。正確にいうと「買いました」というより、「傍らを通過する際に買っていました」という感じです。

小笠原、行きたい。(←まだ行ったことがない)

 

前から空港話があったので、もうできたのかと思い聞いてみると「船しかない。24時間かかる」。昔は1日目の夜に出て3日目の朝着いていたので随分早くなったなぁ、と思いつつ、空港話はどうなっているかとても気になり、短縮版で書き留めておくことにしました。ブータンもそうですが、「隣のネパールみたいにオーバーツーリズムで環境破壊されたくない」という思いで、飛行機による入国者数を強く制限している(その分、コストはとても高くなる)。小笠原にはまだ飛行場はないので(作らせていないので)、24時間かかる小笠原丸により入島者数を制限し、加えて飛行場建設による環境破壊を回避している。これからの持続的な地域振興とは、こうした難しい課題をどうやってスマートに解くかということかもしれません。

 

以下、「小笠原 空港物語」の、1990年以降の短縮版です。(参考資料:タビリス2020.8.15記事。この記事では「物語」仕立てではなく、「〇〇フェーズ」という表現・区分は行っていません)

第一フェーズ。1991年に国の「第6次空港整備五か年計画」に予定事業として採択され、1995年に空港の位置を兄島に決定。ボーイング737クラスの中型機を想定した1800メートルの滑走路を建設。兄島と父島の間にロープウェイをつくる構想まであった。しかし環境破壊が危惧され撤回。

第二フェーズ。1998年に、父島南部の時雨山が建設地候補に。しかしそこは水源地であり、たとえつくるとしても建設費がかさむため2001年に撤回。

第三フェーズ。これが一番悲しいです。飛行機がダメなら高速船で、ということでテクノスーパーライナー(TSL)が計画され2004年には進水式まで行った。しかし重油が高騰し運行すれば大赤字。2005年には東京都も支援を断念して、115億円かけたこの船はほとんど活用されることなく2017年に解体。

第四フェーズ。やっぱり飛行機。島民の支持も得て2006年に「小笠原諸島振興開発計画」に検討を明記。2008年には「小笠原航空路協議会」を設置。さまざまな計画案を検討。しかし2010年の第5回協議会を最後に空港計画停滞。

第五フェーズ。2016年に小池知事が就任。空港建設に前向きな姿勢を示すと2017年に久しぶりに第6回協議会が開催され、50人乗りのプロペラ機が離発着できる1200メートル程度の滑走路を想定。さらに短くできないかと2018年の第7回協議会で1000メートル案公表。実際の機材を探しATR42-600型機(48席)であれば800メートルまで短縮でき2022年に納入可能と想定。(コスト問題は残る。滑走路建設はかなり長期を要する。)

第六フェーズ。2020年7月の第9回協議会でAW609型機であれば垂直離発着が可能。滑走路はゼロメートルでもできる。ただし小型化せざるを得ず定員は最大9席。こうなると、島民の緊急時移送用という感覚に近いかもしれません。そうすると、コストを誰が負担するのか。

 

もう少し検討は進んだのかもしれませんが、S駅で「小笠原諸島特産 島檸檬醤油」を購入し「小笠原、行きたい」と思った本日時点で、たとえば、「まずは災害用・緊急用にAW609型機を導入することも選択肢として詰めつつ、ATR42-600型機(48席)のような航空機を想定して800メートル程度の滑走路またはとことんそれを短くして建設可能な場所や工法などを検討してみる」というあたりで検討が進行しているのでは、と思われます。

21世紀も20年が過ぎ、こんなにテクノロジーも進歩したと思っていたのに、1991年から30年も検討しているこの課題は結論に至っていない。第六フェーズまで検討されたとはいえそこで出されている選択肢はそう多くはない。「地域の自然環境を守りつつ緊急時にも対応でき日常的にも特に島民の利便に貢献する航空便」の物語はまだまだ続きそうです。

 

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“A Research Agenda”シリーズ『A Research Agenda for New Urbanism』

都市計画学会の学会誌『都市計画』では以前、(研究)テーマごとに研究レビューが毎年掲載されて、各分野で何が課題になりどのような研究が望まれるかなどの情報が凝縮されていました。けれどもそれは次第に、「その1年間に都市計画学会誌に掲載された論文全リストおよび解説」のようになり、「毎年リストをつくってもあまり意味ないね」ということになり、2年に1回あるいは必要に応じてとなり、ついにはこうした形のレビュー自体がなくなってしまいました。廃止されてからかなり時間が経ちます。

 

“A Research Agenda”シリーズの1つ『A Research Agenda for New Urbanism』(Edward Elgar 2020。編著者はEmily Talen)を手にしたとき、冒頭のような経緯を思い出すとともに、このような解説書が今日必要であると改めて感じました。この“A Research Agenda”シリーズは、「今、都市計画分野で必要とされている研究は何か」についてシリーズで出版されているもので、『A Research Agenda for New Urbanism』も含めて16冊出ています。「研究レビューの本なんて出版しても売れないよネ」と思うのですが、たまたまこの本が目に留まり、読んでみるととてもよくできている。どう「とてもよくできている」かというと、「ニューアーバニズムといえばこの人だよね」という編者が「ニューアーバニズム、いいよネ」といった態度にならず、「1990年代当初は追い風だったニューアーバニズムだが、常に批判にさらされ、21世紀に入ると他の対抗勢力が強くなり(タクティカルアーバニズムは対抗勢力ではないがその1つ)、さらに近年では都市における不平等問題がアメリカでは強くなりニューアーバニズムはその原因にもなっている、そしてさらに、自動運転技術が進みe-コマースが伸びてくると「公共交通」や「商店街」の意味や位置づけも変わりニューアーバニズムも変わらなければならない」という自覚のもとに、それぞれのエキスパートにテーマを割り振って、『A Research Agenda for New Urbanism』を真剣に書いている。だからおもしろいし研究テーマや関連文献も豊富に示されていて引き込まれる。

 

1つだけ残念なのは、『A Research Agenda for New Urbanism』はアメリカにおける都市計画課題を(本人たちは意識していないかもしれないが)扱っていることです。それを乗り超えるべく発想されたと思われるのが第10章で、アメリカ発「ニューアーバニズム」と国連発「New Urban agenda」を比較しつつ、これら2つと1933年の「アテネ憲章」を比較して、さまざまな「これからの(研究)課題」を導き出しています。そのような章もありますが、日本(発)の都市計画研究のためにはやはり日本(発)の“A Research Agenda”を論じる必要があることを感じさせられた、良き1冊でした。

 

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品川フィールド(その8) : 「スーパー・メガリージョン構想検討会 第18回 資料2」

品川フィールド(その3)で列挙した構想段階も含めた9つのプロジェクトは以下のとおりです。

1)旧車両基地区画整理事業(とビル建設事業)

2)泉岳寺駅改造事業(関連する再開発事業)

3)山手線新駅開発事業

4)環状4号線事業化(および品川駅北口広場設置)

5)リニア新幹線品川駅工事

6)京浜急行連続立体化事業(特に品川駅部分平面化事業)

7)品川駅前国道(放射19号線)拡幅事業および国道上デッキ化事業

8)品川駅西口一帯再生計画(地区計画)

9)地下鉄南北線の品川駅乗り入れ事業(構想段階)

このところ、多くの事業やその関連事業が急速に進んでいて、それらの「全貌」をとらえることが難しいと感じていたところ、標記資料「スーパー・メガリージョン構想検討会 第18回 資料2」がそれにかなり近いまとめになっていることに気づきました(⇒関連資料1)。とりわけこの数か月の間に「工事」が(目に見える形で)進んでいる4)の品川駅北口デッキ工事(と思われる)と、6)のホーム拡張スペースを確保するための駅前ビル解体工事が、平面的に全体計画のどこに位置しているのかを見るには、この「資料2」のp12(p19も同じ)がよくできています。この「資料2」の上に、さらに進んでいる諸事業(の情報)を重ねていくと、2035年くらいまでのイメージが整理できます。

 

ところで、リニア新幹線ができると三大都市圏が一体化した「スーパー・メガリージョン」ができ、そうすると、、、と検討されたのが「スーパー・メガリージョン構想検討会」でした(⇒関連資料2)。目に見えているのは単なる「工事」の積み重ねですが、そこに込められたさまざまなビジョンや葛藤などについても見えてくる「資料2」です。

 

 

[関連資料]

1.「スーパー・メガリージョン構想検討会 第18回 資料2」

https://www.mlit.go.jp/common/001272942.pdf

2.「スーパー・メガリージョン構想検討会」のページ(国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000091.html

 

 

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「企業、コロナで都心脱出」

5月30日の日経朝刊トップ記事に、「企業、コロナで都心脱出」との見出しで、かなり客観的なデータにもとづく「都心脱出」の様子が示されていました(国税庁の「法人番号公式サイト」を用いて2019年1月以降に移転登記した法人39万件を対象としていろいろな分析をしている)。東京区部から外部に「移転」した法人数は2020年4月以降に約6700社(←これが2020年度の数字。2019年度より24%増。なお、2020年度の東京区部への転入は約4600件)。このうち最多の「脱出」先は横浜市で約770社。いくつかの自治体や事例が紹介されるなかで、最も「脱出」を受け入れた横浜市の条例改正(転入企業への助成)の話などが紹介され、記事としてはよくできていると思いました。

 

さて、ここからが本題。一応、上記したようなデータの定義は理解したうえで、「横浜市は巨大都市で東京にもすぐの場所だから、総数で多いのは当然でしょ」。

 

そこで、市町村人口を勘案するため、「10万人当たり移転数」を出してみることにしました(2021年4月時点の人口で割る)。新聞記事には実数まで出ていないため、同じ記事のネット版情報で補足してみると、総数上位10市(10位が同数のため11市)の10万人当たり移転数は以下のとおりです。(アバウトに計算)

    移転数  人口(万人) 10万人当り移転数

横浜市  772   376    21

川崎市  365   154    24

埼玉市  260   132     20

川口市  188    59     32

千葉市  159    98     16

市川市  131    50     26

船橋市  119    64     19

武蔵野市 106    15     71

八王子市  97    58     17

調布市   91    24     38

松戸市   91    49     19

 

意外なことにどの市も似たり寄ったりで、武蔵野市の71が突出。調布市と川口市がやや高いといえば高い、という結果となりました。調布も川口も東京23区に隣接しているので、新宿から杉並に移転した企業などとも比べないと、本当に高いといえるかどうかはわからない。武蔵野市の「71」という数字だけは「高い」とみてよいかもしれない。

そういう意味では新聞記事に示されたマル印の大きさからみて、軽井沢町のマルは「100」、人口は2万人なので指数は「500」。概算ではありますが、これはかなり高い。鎌倉市はデータが「73」と出ていて17万人なので43。東京23区からの距離も考えればまあまあ高い。ちいさな町ではたとえ1件でも指数は大きくなるので(人口5千人の町に1件移転してくれば指数は20で横浜並み)、全国データも見てみたいところです。

本当は、夜間人口の「移住」などともからめてこうしたデータを分析すれば、ある限られた時期のデータではあるけれどもおよその傾向はつかめるはずです。さらに従業員数などもわかるともっとよいです。

さきほど「横浜市は巨大都市で東京にもすぐの場所だから、総数で多いのは当然でしょ」と一蹴してしまったかのように見えたかもしれませんが、「772」の移転が横浜都心に集中していたのか、(労働力の多い)郊外に案外多くちらばって立地したかは興味の湧くところです。

 

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